古い町並みが残る漆器の産地、海南市黒江地区。築100年以上の旧岩﨑邸をコミュニティスペースへ改修するためのクラウドファンディングが11月29日㊊に始まる。活動の中心になるまちづくり会社、楽善舎の瀬戸山江理代表は「魅力ある古い建物が台風などで被害を受けた後、建て替えられたり、更地になったりと、後から気付いてつらい思いをすることが少なくない。旧岩﨑邸を1号物件に、遊休不動産の保全と活用を進めたい」と未来を見据える。

黒江の町並み 未来へ〜楽善舎 1号物件改修にCF

町家風の味わい残る旧岩﨑邸。川端通り一本南の小道沿いにある

 旧岩﨑邸は、商店兼住居だった建物。現在の所有者で、幼いころ、祖父母と4年間を過ごした有田川町の保井伸之さんによると、昔は漆器製作に使う紙やすりやにかわなどの材料を売っていた。築100年以上と見られるが、黒江の老舗漆器店、池庄を営む池原弘貴さんは「うちの店舗部分が約220年。2階の天井が低く、1階天井板のすぐ上に畳を敷いていたところなど共通点が多く、200年近く前のものかもしれない」と見る。

 2000年ごろからだれも住んでいなかったこの建物の保全と活用を、保井さんのいとこで、当時管理していた平井崇晴さんが17年末に考え始めた。各所に相談する中、黒江を盛り上げようと活動する瀬戸山さんたちと出会った。当初は黒江めった祭りや漆器まつりなどが行われる際、ガレージ部分だけを会場の一つとして活用。大阪に住んでいた平井さんも駆けつけて手品を披露し、盛り上げに一役買った。

今も残るかまどの活用方法を検討

 そんな矢先の19年末、突然、平井さんが他界。保井さん、瀬戸山さんらが改めて建物の今後について話し合い、平井さんの思いを継いで、本格的に再生を進めていくことにした。以降は毎週土曜に有志が集まり、2年近くかけて片付けと改修案の検討を進めてきた。

 計画では、建物の一部を小さなスペースに分けてテナントに。また、各種教室や作品展示などに使える多目的スペースを設ける。来年4月のオープンを目指し、来週、クラウドファンディングを開始する。

 保井さんは「古い建物で、解体した方が安心と以前は思っていました。が、ここ数年、黒江に通い、古民家が並ぶ町並み目当てに来られる観光客の多さを知り、ここも残すべきと思うようになりました。瀬戸山さんたちと出会えたことは大きな財産です」と目を細める。

 施設名は「黒江tettote(てっとて)〜旧岩﨑邸」に決まった。「てっとて」は黒江弁で「手伝って」の意味で、「〝手と手〟との思いも重ねました」と瀬戸山さん。「黒江でも古民家を残し、活用したいと思いながら、どうすれば分からない人もいると思う。そんな方たちと手と手をつなぎ、町並みを未来へつないでいければ」と願っている。

 クラウドファンディングの詳細はキャンプファイヤーHPで。

(ニュース和歌山/2021年11月27日更新)