みかんのおいしいシーズンです。フルーツ王国・和歌山では、30種以上のかんきつが栽培されています。かんきつは免疫力を高めるビタミンCが豊富。定番から珍品まで、この冬は地元産かんきつを楽しんでみませんか?

 

温州みかん

17年連続 日本一

 和歌山県は17年連続で温州みかんの生産量日本一。県内では1570年に有田市で栽培が始まり、この後、各地に広がっています。

 海南市下津町はみかん発祥の地と言われ、みかんの原種である橘(たちばな)を常世国から日本へ初めて持ち帰ったみかんの神様、田道間守(たぢまもり)をまつる橘本神社があります。

 江戸時代にはすでにみかんの産地として全国的に有名で、蜜柑方(みかんがた)という共同出荷組織があり、藩外へ販売していました。紀伊国屋文左衛門が江戸へ出荷し、財をなした伝説も有名ですね。

 

2つの日本農業遺産

毎日品質チェックしながら、大切に熟成させています

 和歌山は、みかんにまつわる2つの農業遺産があります。1つは2019年認定の「下津蔵出しみかんシステム」。下津町では12月に完熟させたものを収穫し、畑に作った木造や土壁の蔵で1ヵ月以上貯蔵します。甘みが増す1~4月が食べごろです。

 2つ目は昨年2月に認定された「有田みかんシステム」です。日本で初めてみかん栽培を生計の手段に発展させ、農家や出荷組織が協力して産地化してきました。400年以上、全国有数の産地として続いています。

 

品種カタログ

 温州みかんだけでなく、和歌山では、これから旬を迎える清見や春峰などのかんきつ、レモンやゆずのように酸っぱくて生食に向かないけれど、料理や加工品として使われる品種も作られています。

 

ゆら早生(突然変異の極早生)

 由良町の農家が発見した突然変異の極早生です。1995年に登録されました。糖度が10~13度になる10月上旬が旬。ヘタの辺りは青色ですが、果実はオレンジ色で甘みとコクがあり、産地化が進んでいます。

 

 

三宝柑(殿様が愛した)

 柚子とだいだいが自然交配したもの。江戸時代に和歌山城内で発見されました。珍しさとおいしさから三宝(さんぼう)という器に乗せて殿様へ献上され、当時は一般の栽培や藩外への持ち出しが禁止されていました。現在、全国に出回る98%が県産です。

 

 

清見(日米ハイブリッド)

 宮川早生にアメリカのトロビタオレンジを交配させた品種で、1979年に「清見」と名付けられました。和歌山県が生産量全国一です。果汁が多くジューシーで、ジュースにぴったり。不知火(デコポン)や春峰(しゅんぽう)などの親です。

 

 

YN26(和歌山県オリジナル品種)

 ゆら早生の血を引く、極早生の県オリジナル品種で、2012年に登録されました。品種名の「YN26」か「紀のゆらら」の名で流通しています。青い皮が酸っぱそうですが、9月に酸味が抜けて食べごろを迎えます。さわやかな甘味が楽しめます。

 

 

ハッサク(さわやかな味わいがくせになる)

 古くから愛される定番かんきつ。木に成ったまま完熟させる木成(きな)りハッサクは、芳純でほろ苦い味わいと、さわやかな香りが人気です。和歌山が生産量全国1位で、主な産地は紀の川市、有田川町、日高川町です。

 

 

春峰(吉備農家が生んだ)

 有田川町吉備地区の農家が、清見と水晶文旦(すいしょうぶんたん)を交配させました。だいだい色で、文旦の仲間ですが、皮がむきやすいです。さっぱりした味とさわやかな香りを楽しめます。ジューシーながら、薄皮がやわらかくそのまま食べられるので、手がベタベタしにくいのがうれしいですね。

 

 

はるき(2025春デビュー予定)

 県内限定で2020年に栽培が始まった中晩柑(ちゅうばんかん)の新顔です。清見とポンカンを掛け合わせた品種で、春の紀州を感じる果物として流通してほしいとの願いを込めて「はるき」と名付けられました。水分が少なめで、3月にさくさくした食感の果実を味わえます。

 

 

仏手(ぶっしゅ)柑(縁起が良い)

 果実の形が千手(せんじゅ)観音の手に似ている縁起物です。インド東北部原産で、有田地域が主な栽培地。どこを切っても実はありませんが、花のような濃厚な香りが楽しめます。高野山では甘露煮やまんじゅうに加工したものがお土産で売られています。

 

 

じゃばら(邪を払う幻の果実)

 北山村原産。果汁が豊富で香りが良く、苦みと酸っぱさが特徴です。花粉症を緩和させる効果が期待できるといわれ、果汁を使ったジュースやあめなど、様々な加工品が生まれています。

 

(ニュース和歌山/2022年1月3日更新)