4世帯9人 紀美野町でシェアハウス

 地方移住を考える人が増える一方、理想通りの生活ができず悩む人も。こうしたミスマッチを解消したいと古民家のリノベーション事業を営む片桐翔太さん(30、前列左から2人目)がシェアハウス「フラッグ」を昨年11月、紀美野町国吉地区で始めた。「共同生活で仲間ができ、ここを出た後も一緒に活動できる関係が生まれる。自分に向いているかを確認する入り口に」と意欲を見せる。

住人の一人で写真家の西村明展さんが撮影

 タイやミャンマー、ラオスなど10ヵ国で日本人がいない村に滞在し、文化や風習を学んだのを機に、環境に配慮した暮らしを提案したいと家族3人で3年前に同町へ移住した。山の水を引き、薪で風呂を沸かす、やりたかった生活。しかし現実は時間に追われ、理想とのズレに打ちのめされた。「向いていると思っていた自分でも苦労した。技術がない人はもっと大変だろう」

 そこで考えたのがシェアハウスだった。母屋と離れで4世帯9人が生活する。薪での湯沸かしや風呂トイレの掃除は当番制で、できる人が料理し、その間、別の住人が子どもの面倒をみる。互いに支え合う暮らしに、「一人ひとりの負担が分散されてゆとりが生まれ、孤独を感じません」と妻の祐保(ゆほ)さん(27)。

 夜はストーブの周りに集まって語らい、休日は山で採取した植物を使ってのブーケ作り体験や畑仕事、映画鑑賞会と交流は盛んだ。妻と移り住んだ後藤丈昇(たける)さん(24)は「縁のない土地への移住は時間もお金もかかるので、シェアハウスなら始めやすい。他人と住むのは無理と思っていたが、皆が思いやりをもって生活していて、刺激を受けます」とにっこり。

 毎月第3日曜に地域住民と田舎暮らしに興味のある人が交流する催しを開くほか、SNSで日々の様子を発信。県や町と連携し、移住希望者の見学を受け入れる。今後、小屋を改装して新たな住人を募る計画。片桐さんは「持続可能な地域には子育て環境と働く場が必要。次は雇用の創出へ事業を広げたい」と話す。

 詳細はインスタグラム「山の中で生きてみる」で検索。

(ニュース和歌山/2023年2月25日更新)