チャリティ上映や演奏会、募金 日本との友好背景に

 2月6日に発生したトルコ・シリア大地震の被災者を支援する輪が広がっている。日本とトルコが題材の映画を上映し、鑑賞料を全額寄附するNPO法人や、チャリティ演奏会を企画するアマチュア作曲家、留学生との交流経験から寄附を呼びかけた小学生ら。民間や学校の動きを見た。

NPO法人の冨田理事長(右)と西廣理事

 トルコと日本の関係は深い。1890年、串本沖で座礁したトルコ軍艦エルトゥールル号(エ号)の乗組員を地元の人たちが総出で介抱。一方、1985年のイラン・イラク戦争時、イランから出国できずにいた日本人をトルコが救援機で脱出させた。2015年にはこれらの史実を元に、映画『海難1890』が制作されている。

 今回、5万6000人以上が犠牲となった大地震の被災者支援として、この映画を上映し、鑑賞料を全額義援金に当てるのが、制作を支援したNPO法人「エルトゥールルが世界を救う」。冨田博文理事長は「エ号事故では、明治時代の人の『目の前の困っている人を何としても助ける』という気骨ある精神に胸を打たれました」。西廣真治理事も「事故後、私たちの祖先がとった行動を伝え継ぐことで、地域への誇り、郷土愛が醸成される。それが助け合い精神につながります」と友好国の惨事に、全力で後押ししていく考えだ。

 また、エ号と救援機の話に感動し、交響曲を書き上げ、和歌山市や串本町、トルコ各地で演奏会を開いてきた指揮者・作曲家の向山精二さんは「被災地近くの都市で演奏したことがあり、心が痛むばかり」と顔を曇らせる。9月に県民文化会館などでチャリティ演奏会を開き、現地での公演も計画中。「追悼歌作曲も打診されています。被災者の安らぎになれば」と思いをはせる。

買い物客らに募金を呼びかける芦原小5年生

 さらに、芦原小5年生7人は昨年11月から2回、和歌山大学留学生と日本の昔遊びやそば打ちで交流してきた。うち1人がトルコ人のシスシマン・ラビア・メリサさんだったことから、地震翌日、ニュースを見た川島夕璃さんの発案で、募金活動を決定。3月14日、手作りのトルコ国旗を手にスーパー前で買い物客らに支援を呼びかけた。

 川島さんは「メリサさんに連絡し、家族の無事は確認できましたが、彼女の知人らのことを考えると安心できません」。杉原悠斗くんは「壊れた建物や苦しむ人たちの映像を見て、自分たちでもできることをと思いました。生き抜くために使ってもらいたい」と、集まった2万9516円を市役所に託した。

 このほか、社内にトルコの在和歌山名誉総領事館を置く島精機製作所を始め、紀陽銀行、トヨタカローラ和歌山、砂山小、和大附小など、企業や学校が支援を行っている。

 NPO法人の冨田理事長は「トルコでは多くの人たちが『日本は素晴らしい国』と思ってくれていて、東日本大震災の時も随分長く残って救援活動をしてくれたほど。映画から、両国の特別な友情を感じてほしい」と呼びかけている。

トルコ・シリア大地震への支援上映会

 4月17日㊊午後5時、和歌山市役所東隣の和歌山城ホール大ホール。田中光敏監督の講演後、『海難1890』上映。1000円、高校生以下は保護者同伴の場合、無料。詳細は「エルトゥールルが世界を救う」HP

(ニュース和歌山/2023年4月1日更新)