濱口邸サルスベリ 石巻へ

 津波からの避難を呼びかけた史実を伝える稲むらの火の館(広川町)が、東日本大震災で被害にあった宮城県石巻市の旧大川小学校にサルスベリの木を「ともだちの樹」として寄贈、5月4日に植樹式が行われた。﨑山光一館長は「避難を先導した濱口梧陵の自宅にあった2本のサルスベリのうちの1本です。この交流をきっかけに、海近くで地震があれば津波が来ると思って行動してほしい」と呼びかけた。

 大川小は、津波で児童、教職員計84人が死亡。校舎が壊滅状態となり閉校し、一部は震災遺構として残されている。

 植樹は和歌山市青年団体協議会(高垣晴夫会長)が仲介。協議会所属の同市BBS会が2011年末に石油ストーブを石巻市に贈ったのをきっかけに、翌年から毎年1㌧ほどのみかんを届けて「みかん狩り運動会」を開き、ふれあいを重ねている。

 和歌山では150年以上前の安政の大地震の際、濱口が津波を予見し、村人に避難を呼びかけたことで被害を最小限に食い止められたことが伝わる。和歌山からは以前、石巻市のシンボル木クロマツ、和歌山県木ウバメガシを寄贈しており、今回は濱口邸のサルスベリを植えた。

 高垣会長は「和歌山と宮城が友達、木同士も友達、もちろん、一緒に植えた子どもたちも友達。植えたのは緑の日なので、年1回は集まり、震災のことを伝えてくれると、記録から記憶につながる」。﨑山館長も「小学校のすぐ横に山があるのに、犠牲者が大勢出たのが悔しい。2度とこうしたことがないよう、ともだちの樹を伝承のきっかけに」と願いを込めた。

写真=濱口邸にあったサルスベリに土をかける子どもたち

(ニュース和歌山/2023年5月27日更新)