北ぶらくり丁に〝映画館〟お目見え――!? 和歌山市中心部から映画を見られる場が消えて久しい中、10月に新しく「シネマ203」がオープンする。ただ、〝館〟と言うものの、10数人がちょうどいいこぢんまりした空間だ。開設は、配給会社でアート系映画を紹介してきた高水美佐さん(写真)。「203号室から、和歌山の映画ファン203人に届く作品を。芸術を次世代の文化へつなげたい」との思いにあふれる。

 映画館は、和歌山市本町の北ぶらくり丁会館203号室。音響、防音工事を施し、ゆったりくつろいで見てもらえる。

 上映するのは、大きな映画館でかからないようなアート系が中心で、いまの和歌山に合うと感じた作品。土日祝に1日4回、希望に応じ平日も開ける。内容は月替わりで、年12本を予定する。

 きょう9月2日㊏からのプレオープンに、デビッド・ボウイやYMOらの写真を撮った鋤田正義さんのドキュメンタリー『SUKITA』を選んだ。ロックに魅せられ、商店街から世界へ飛び出した熱い人生を見てもらうためだ。

 10月7日㊏のグランドオープンは、一番見てほしい作品として、昨年夏に東京渋谷で大ヒットした爽やかなフランス映画『みんなのヴァカンス』に決めた。

 

ぶらくり丁へ恩返しのため

 小学生のころ、ぶらくり丁で見た『キングコング』が原体験。高校時代は今は無き築映に通い詰め、東京で過ごした大学時代は「インディーズから娯楽大作まで3日に1本ぐらいは見ました」と言うほど、はまった。

 アメリカの大学に留学して映画を学び、小さな老舗配給会社に就職。「タイトル決め、字幕発注、ポスター作り、試写会準備、全国各地へ上映依頼と鍛えられました」

 大阪の配給会社に勤務した後、和歌山に戻っても上映会を主催するなど映画との縁は切れ無かった。ただ、「ハコ(映画館)は持たない」と決めていた。

 それが2年ほどで、「ここで映画を見るために」と気持ちが変わる。特に昨年、きのくに音楽祭事務局に参加した経験から、「クラシックに詳しくなくても、良いモノは良いと教わりました。良質の映画が和歌山を素通りせず、触れられる場を」との思いが強くなった。

 北ぶらくり丁を選んだのは、「映画を見る楽しさを教えてもらったぶらくり丁への恩返しのため」と考えたから。

 この界わいは昭和レトロを残しながら新しい取り組みが進む。「映画は、音楽や絵画、物語、知らない街や人に出会わせてくれる。好奇心がかき立てられ、様々な芸術へと興味が開かれる。いま、勢いある北ぶらの力を借りて」と前を見据える。

 大人1700円、大学生1500円、小中高生1000円。シネマ203(090・8172・7074)。

(ニュース和歌山/2023年9月2日更新)