子どもたちに気軽に本に親しんでもらおうと、1976年に和歌山市冬野の正教寺に開設された私設図書館「まゆーら文庫」。ここを巣立ち、芸術家として活動する6人が「グループまゆーら」を結成、和歌山城ホールで初めての作品展を開いている。事務局の書道家、上田大愚(たいぐ)さん(54)は「文庫で培った感受性や創造力を生かし芸術の道に進んだメンバーが集まり、世代を超えたグループ展につながりました」と感慨深げだ。

 子どもたちの憩いの場として、絵本や伝記など500冊を集めてスタートしたまゆーら文庫は、単に本を貸し出すだけでなく、新聞や文集作り、紙芝居など体験の場としても親しまれ、多いときは1日30人ほどの子どもたちでにぎわった(写真)。少子化に伴い、利用者が減少していたが、家庭や学校では経験できない世代間交流を通し、挨拶や言葉遣い、対人関係を学べるとあって、かつての利用者が子どもを連れてくるなど、近年は親同士のコミュニティにもなっている。

 文庫の藤浪和子代表から、「文庫出身の若い世代もイラストレーターや工芸家など、〝ものづくり〟に携わっている」と聞いた上田さん。生まれた頃から顔なじみの人達だったため、「せっかくならたくさんの人に見てもらい、若い作家が大きく育つきっかけにしたい」と今年9月、グループまゆーらを立ち上げ、作品展の準備を進めた。

 メンバーは、文庫設立当初から通っていた上田さんや草木染めのソメテヲルさんの〝親世代〟に加え、10年ほど前まで顔を出していた、漫画とイラストを手掛ける真朱(しんしゅ)さん、ボールペンを使ったアニマルアート作家のitto(いっと)さんら〝子ども世代〟の計6人。県美術家協会理事の上田さんをはじめ、各種コンクールで賞に輝いた実力派が名を連ねる。

多彩なジャンルの作品が並ぶ Ⓐ上田大愚さん「水平線」Ⓑソメテヲルさん「ストール」Ⓒ真朱さん「神格」Ⓓittoさん「会話」

 会期中は、作品はもちろん、パネルで文庫の歴史を紹介。特に、文庫が創作活動の下地になったと実感しており、上田さんは「芸術家がよく寺を訪れており、作品に触れる機会が多かった。七宝焼体験会など、芸術を身近に感じられたのが大きい」と明かす。真朱さんも「本を読むことで想像力が養われた。『わすれられないおくりもの』という絵本が好きで、おくりものが一体何なのか、あれこれ思い浮かべながら表紙をめくった。挿絵の色合いや紙の匂いまでも感じ取っていた」と振り返る。

 蔵書は約2500冊に増え、いまも第1・3・5土曜午後に開設。上田さんは「決まった日に必ず開いているので、誰もが気軽に戻れる場所になっている。6人が集まれたのは、文庫があったから。1回だけでなく次につなげ、若手の活動を発信する場を作っていければ」と目を細めている。

グループまゆーら作品展~〝縁〟がつなぐ物語

 11月29日㊌まで、和歌山城ホール3階。グループまゆーら6人と、写真家の松原時夫さんら賛助者6人の作品合計約40点。午前9時~午後10時。一部は、㊎㊏㊐㊗午前10時~午後5時のみ展示。事務局(gurupumayura@gmail.com)。

(ニュース和歌山/2023年11月18日更新)