アマチュア劇団「演劇集団和歌山」が舞台兼稽古場として活用してきた和歌山市和歌浦南の和歌浦小劇場が、きょう4月27日㊏から5月5日㊐までの10公演を最後に46年の歴史に幕を下ろす。これまで現代劇や海外作品、和歌山を舞台にした創作劇など38作品を上演。楠本幸男代表(写真)は「お別れ公演のタイトルは『ちょうど時間となりました。』。チケットは全て売り切れで、有終の美を飾れそう」と喜んでいる。

小劇場ブームで

 演劇集団和歌山は1970年、「地元を代表するような劇団をつくろう」と、和歌山大学演劇部や一般の演劇研究会メンバーが中心となり結成。劇団名がなかなか決まらず、実は今も仮名のままだ。当初は市内の公共施設で練習に励んでいたが、78年に、木箱工場だった建物を借りられることになった。広さは約20坪。お客さんを入れて劇ができるよう、自分たちで扉を付け、床や壁を塗るなど改装。7月末にこけら落とし公演『天狗裁判』を開いた。

 劇団で50年にわたり活動する劇作家の楠本幸男代表は、「80年代、全国的に小劇場ブームが起こりました。特に、88年の公演『鸚鵡(オウム)とカナリア』は、当初4日間だけの予定でしたが、連日満席が続き、急きょ追加公演を開いたほど。演劇界が盛り上がっていました」と振り返る。

 劇団創設時に21歳で入団した城向(しろむかい)博子さんは、2年で退団したものの、20年後に再入団。現在も役者と衣装係を担当する。「この場所は私にとって青春時代の思い出が詰まった〝部室〟のようなものです。練習が毎回楽しみだったので、なくなるのはとても寂しい」と名残を惜しんでいた。

 楠本代表も「劇以外に、団員同士が結婚式を挙げたことや、テレビのロケで和歌山に来ていたタレントの出川哲朗さんが偶然通りかかり、劇場を訪問し一時周辺が大騒ぎになった」ことなど思い出を語った。

結成間もない頃の劇団メンバー

 

賑やかに幕引き

練習風景。左が城向さん

 さよなら公演は、大正15年12月の和歌浦が舞台。実在した芝居小屋、若松座がモデルの若宮座で起こる騒動を描いたドタバタ劇だ。楠本さんは「最後は楽しく、お祭りのような賑やかさで幕を引きたいとシナリオを書きました。また劇中劇として、これまでの作品を登場させており、和歌浦小劇場の歴史を感じられます」と自信を見せる。

公演を目前に、けい古にも熱が入る

 今後、建物は取り壊した後、所有者が新たに写真館を造る。一方、劇団は同市北町の劇場、ゲキノバきたまちの1階をけい古場として使用する。楠本代表は「劇場は閉めますが、私たちの演劇は終わらない。アクセスしやすい街中に拠点を移すので、若い世代が興味を持てるような芝居をしていきたい」と目を輝かせている。

(ニュース和歌山/2024年4月27日更新)