島精機製作所 島正博社長夫人 和代さんの生涯 一冊に

 

 島精機製作所、島正博社長の妻で、和島興産社長を務めた島和代さんの評伝『紀州のエジソンの女房~島精機を支えた肝っ玉母さん・島和代物語』が11月25日、中央公論新社から出版された。3年前に75歳で急逝した和代さんの生涯をノンフィクション作家の梶山寿子さんが取材。島精機の歴史に沿い、表情豊かな和代さんのありし日を描き出した。

 

島和代 まっすぐな気性と気さくな人柄から〝和歌山のお母さん〟と慕われた和代さん。1937年、岩出市に生まれ、22歳で島社長と結婚し、島精機の創業期を支え、4人の子どもを育てた。また、和島興産社長として和歌山市の中心市街地活性化に力を尽くした。

 同書は、梶山さんが島社長はじめ家族、関係者から約1年かけて話を聞き、豊富なエピソードを通じ、和代さんの歩みを振り返る。

 天才発明家といわれ、仕事一筋の島社長との出会い、プロポーズに始まり、姑との溝、大根の煮物が続く厳しい生活、子育てしながら工員の昼食30人分をつくる忙しい日々。夫が開発で満足しないよう製品化へ向け叱咤激励…と昭和の高度成長期を、妻、嫁、母としてたくましく生きた姿をつづった。

 愛きょうと度胸で人の心をつかんだ和代さんの姿もたっぷり。半面、和島興産社長としてフォルテワジマを立ち上げ、中心市街地発展に力を入れる中での労苦、家族間の悩み、神仏への思いと心に秘めた部分に筆は及んでいる。

 梶山さんは「芯の強い方ですが、実は少女のように繊細。あまり知られていない面を書きたかった。涙あり、笑いありの物語で、企業の発展を支える夫婦愛、ゆるぎない絆にふれてもらえます」。取材に協力した三女の山田都さんは「母は、女性、母として真似のできない存在。本を読むと、母が近くにいる気がするほどです。母の本当の姿を知ってほしい」と望んでいる。

 四六判、272㌻。県内主要書店で販売中。1620円。

写真=本を手にする著者の梶山さん(右)と和代さんの三女、山田都さん

(2016年12月10日号掲載)