夏が近づくと増えてくる蚊。蚊を撃退するのに大活躍するのが渦巻き蚊取り線香です。この夏の必需品は100年以上前、実は和歌山県の有田市とその周辺で誕生しました。今も有田は全国有数の生産地で、今回、蚊取り線香を作る有田市辻堂のライオンケミカルを見学します。

有田市の製造会社 ライオンケミカルの工場見学

1 粉を混ぜる

 線香の材料は除虫菊抽出粕粉など、いくつかの植物を乾燥させて作った粉を混ぜます。職人が粉を握ってまとまり具合を確かめ、混ぜる水の温度や量を調節します。生産本部長の樋渡良太さんは「湿度や材料の乾き具合で変わります。失敗すると崩れやすくなる。長年の勘が大切です」。

2 形にする

 粉を板の形に延ばし、金型で渦巻きの形に抜き取ります。昔は職人が1つずつ手で巻きましたが、ライオンケミカルが1943年に世界初の蚊取り線香自動製造機を発明。1号機は今も活躍中です。

3 乾かす

 専用の網板に並べて乾かします。昔は外で乾かしましたが、雨が降ったりすると乾き方にムラがでるので、今は乾燥専用の部屋で1日かけて乾かします。
 樋渡さんは「昔ながらの香りを懐かしんでくれるお客さんが多く、自然の材料で作る蚊取り線香の煙は目にしみにくい。最近はアレルギーなど健康を意識して、自然素材だけで作った商品が人気です」と話しています。

 

除虫菊ってどんな花?

 除虫菊は東ヨーロッパで誕生した菊の仲間。虫が嫌いなピレスロイド系の成分を含むため、昔から虫除けや殺虫剤に使われてきました。1890年に今の有田市出身の上山英一郎さんが、渦巻き型蚊取り線香を発明。以降、有田市とその周辺は蚊取り線香の産地になりました。

 かつては有田で除虫菊が盛んに育てられていましたが、今は見られなくなりました。

写真= 有田一帯で見られた除虫菊畑

(ニュース和歌山/2019年6月12日更新)