『紀伊続風土記』に「其勢最雄壮なり。下深淵に落ちて地軸を動揺し迸沫霧となりて那智山の一の瀧には譲るといへとも其餘は皆此瀧の下に出すへし」とあるのは宝竜滝である。那智の滝には譲るが、数多の滝は、みな宝竜滝に敵わないというのである。それゆえ〝裏那智の滝〟ともいわれる。

 昔、この丸い大きな滝壺の水が盛り上がったと思ったら、突然、轟音とともに水しぶきを上げ黒い影が天に昇るのを里人が見た。よく見ると、長い尾を持った龍ではないか。里人は腰を抜かしひれ伏していると、龍は那智山の方角に飛んでいった。この時、那智では花山法皇が修行されていて、雲に乗った龍神が突然舞い降りてきたという。この宝竜滝の主であったのかもしれない。

(ニュース和歌山/2017年12月23日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。