那智四十八滝は、那智の滝を中心に那智原生林に点在する滝行の場である。場所は師から弟子に口で伝え、口外禁止、一子相伝と言われる。本来、全容はうかがい知れない秘中の秘である。

 熊野自然保護連絡協議会会長を務めた二河良英さんは自著『那智滝考』で、古代中国における月が地球を回る間に通過する28星座「二十八宿」の一つ、乙女座にある網星など4つの星に夜美の滝を重ねた。那智四十八滝のうち28滝はそれぞれ星座の星を冠する名が付けられている。滝行とは、月の周回のごとく、星座を巡る壮大な行なのだ。

 南方熊楠は、夜美の滝のあるクラガリ谷で粘菌を採取していた。粘菌というミクロの世界から、はるか宇宙の星座と対峙していたのだろうか。

(ニュース和歌山/2018年3月24日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。