和歌山城天守閣で、過去の発掘調査などで出土した紋入りの瓦をはじめ、「土の中の宝物」を見ることができます。例えば1957(昭和32)年の天守再建工事の時、乾櫓の下から出土した宝篋印塔石(ほうきょういんとうせき、供養塔)や「四十〆大亀」「矢田」と彫られた2個の礎石。天守台の地下から見つかった天守の柱などが展示されています。この柱について「天守は江戸時代に一度焼失して1850(嘉永3)年に再建されているが、それ以前のものであろう」と展示説明にあります。その見出しに「創建時の天守を支えた柱」とあるように、柱とは言え、戦前まで残っていた国宝天守よりさらに古い天守の一部を見ることができるのです。

 また、江戸時代の和歌山城へタイムスリップするには、和歌山市立博物館の復元模型やわかやま歴史館のシアタールームで「よみがえる和歌山城」の映像があります。いずれも学術的考証に基づいて製作再現されたもので、往時の和歌山城内郭へ案内してくれます。

 市役所前にあるわかやま歴史館には、1717(享保2)年、板張りの黒い天守を白壁に改めるにあたり、藩主への説明用に作成された立体絵図「御天守起シ御絵図(個人蔵・複製)」が展示されています。先の「創建時の天守を支えた柱」はこの立体絵図の黒い板張り天守のころのものかも知れません。

 和歌山城の原風景を伝えようと、大手門脇には「大手門と二ノ丸の櫓群」、二ノ丸跡には「二ノ丸御殿」が、そして不明(あかずの)門跡にも同様の古写真付きの案内板が立っています。ほかにも江戸時代の地誌『紀伊国名所図会』があります。案内板には『同図会』に着色した絵(『城下町の風景』ニュース和歌山刊)が刷られています。絵に描かれている場所に立ち、絵と現状と見比べれば、江戸時代の様子を浮かべることがたやすくなります。『図説和歌山県の歴史』などにある、空から城内を見た復元図などを手に城内散策をすればタイムマシーンに乗って、江戸時代の「ふるさと和歌山城」を歩いている気分になれるかも知れません。

写真=和歌山城の遠望

(今回で終了します。2年にわたり、ご愛読ありがとうございました)

(ニュース和歌山/2019年3月16日更新)