半世紀以上に渡り、近隣住民や銭湯ファンに愛されてきた和歌山市北休賀町の幸福湯が4月25日㊍、リニューアルオープンする(予定)。一時は閉店も検討されたが、4代目番頭の中本有香さん(26)が継ぐ決意をし、改装。第1土曜の「#イマワカtalk(とーく)」は、新たな挑戦に臨む中本さんに、銭湯の魅力と可能性、今後の展望を聞きました。

 

残した番台

──約3ヵ月の改装を経て、いよいよ再開です。

 「浴室はほぼ全て新しくしました。浴槽はこれまで、体を寝かさないと首まで浸かれなかったのですが、深くして肩まで温まれるようにしました。浴槽のふちには、腰をかけて湯に入れる移乗台を作り、足腰の弱い人も安心して入れます」

──こだわった点は。

 「番台を残した点です。小学生のころから立ってきた場所で、お客さんと世間話ができるし、銭湯の雰囲気が一番出ます。ほかにも、脱衣所と出入り口の間に仕切りを作りました。これまでは玄関ののれんを抜け、扉を開けるとすぐ脱衣所だったため、中が見えてしまう可能性がありました。そういうのは特に若い人が気にするので配慮しました。あと、あるところに金魚の形をしたタイルも忍ばせました(笑)。ぜひ探してみてください」

大好きな場所

──まちの銭湯は減ってきています。

 「和歌山市内は10軒ほどしか残っておらず、後継者がいないところもあると聞きます。うちも曾祖父が1956年に銭湯を始め、家族で守ってきましたが、改装する予定もなく、設備が使えなくなると閉店するつもりでいました。しかし、私が継ぐと決め、家族の了解を得て、改装することになりました」

──元々継ぐつもりだったんですか。

 「いえ。継ごうと決めたのは1年半ほど前です。高校卒業後は大阪の大学で保育士資格を取り、保育関係の会社で働きました。しかし、想像以上に過酷だったため続かず、和歌山で別の仕事をしていました。ある日、行きつけの喫茶店で銭湯の話をしていると、小学校からの幼なじみや居合わせたお客さんが『ぜひ、お風呂屋を残してほしい』と言ってくれたんです。小さいころから成長を見守ってきてくれた常連さんや家族も喜ぶし、何より大好きな銭湯を残せると思い、決めました」

悩みも洗い流す

──銭湯の魅力は。

 「居合わせた人と自然と会話が始まって、色んな人と出会えるところ。携帯電話から離れ、何も考えなくて良いし、知らない者同士で話す方が気楽な時もあります。仲の良い友達と来ても、普段と違う場所で裸同士、リラックスして何でも話せちゃいます。そんな中で、色んな悩みやストレスを洗い流せると思います」

──どんな銭湯にしたいですか。

 「東京や大阪では、銭湯の中で落語会や結婚式を開くところもあります。うちも改装前に音楽ライブをすると、マイクなしでも音が響きました。お風呂上がりのヨガや健康体操もできると良いですね。若い女性は、特にカップルで来た場合、髪型を直したいと思うので、ヘアアイロンを貸し出せるように。また、小さな子がいる親御さんもゆっくり入れるよう、保育士の資格を生かして入浴中に子どもを預かるサービスも日時を決めてやってみたい。色んな世代、分野の人が集まり、幸せだと感じてもらえる銭湯を目指します」

 

幸福湯(4月25日再開予定)

 ♨ 和歌山市北休賀町31
 ♨ 水曜休み
 ♨ 午前9時(土曜は午後3時半)〜午後11時半
 ♨ 420円、小学生140円、小学生未満80円
 ♨ 貸しタオル30円、貸しバスタオル50円
 ♨ 電話 073・433・4526

(ニュース和歌山/2019年4月6日更新)