9月1日は「防災の日」。パラシュートに使われるぐらい丈夫なひも、パラコードを編んでブレスレットにし、日ごろから身につけて備えようと、海南市の市民団体「ごもんいくもん─御門を元気にする会」の事務局を務める脇村清也さんが普及に取り組んでいる。ほどくと2㍍ほどのロープになる防災アイテムで、今春から、様々なイベントに出向いて編み方講習会を開催。地道な活動が実り、同市で着実に広まり始めている。

普段は腕輪 ほどけばロープ〜ごもんいくもんが普及活動

 日方地区、御門町の住民でつくる「ごもんいくもん」は3年前に発足。65歳以上が49%と高齢化が進む中での地域づくりを考えようと活動する。特に防災に積極的で、津波避難場所見学会を開くほか、強化段ボールベッドや簡易トイレを購入するなど、万が一に備える。

 新たな防災アイテムについて調べる中、昨年知ったのがパラコードだ。1本当たりの耐重量が250㌔と非常に丈夫。脇村さんは「インターネット上では色々な編み方が紹介されており、20㌢ほどのブレスレットがほどけば2㍍に。避難所でロープとして張ってカーテンを掛ければ目隠しになるし、止血など様々な利用方法がある。防災に使わない手はない」と語る。

 早速、パラコードを購入し、ブレスレットに仕上げた。「手先が器用な会員が多く、オリジナルの編み方を考える人も。好きな色のひもを組み合わせながらハンドメイドの世界も楽しんでいます」と脇村さん。今春からは下津町の福祉フェスティバルやJR海南駅前でのAGARAマルシェなどイベントに出向いてブースを構え、編み方講習会を重ねている。

 こうした活動が実を結び、関心を持つ人が増えている。認知症の高齢者を受け入れる下津町上の海南グループホームみかんの里では、まず脇村さんの指導を受けた職員が編み方を習得し、入所者へ伝えている。8月3日の納涼祭では講習会を開き、地域の人の注目を集めた。介護支援専門員の嶋田実香さんは「カチューシャに使っている職員もいますね。入所者にとっては手を動かすことが認知症の進行を防ぐことにもつながる。今年秋の下津町文化祭には、パラコードで編んだ作品を出品する予定です」。

 一方、黒江の黒江ぬりもの館では、以前から販売していた一閑張りのバッグの持ち手にパラコードを使った商品を8月下旬に並べ始めた。スタッフの橋本千晶さんは「『この持ち手、何?』から話が盛り上がり、パラコードが広まればいいですね。さらに私たちスタッフが編み方を学んで教えられるようになれば、地域の防災力向上につながるはず」と力を込める。

 編むのに道具はいらず、初心者でも教わりながら30分程度でブレスレットは完成する。脇村さんは「防災バッグに付けておいてもいいし、長く編んで犬のリードにしてもいい。普段の暮らしに防災を組み込むとの考え方で、身につける防災アイテム、パラコードが地域でさらにつながってゆけば」と願っている。

 イベント出店や講習会の予定、問い合わせは「ごもんいくもん」フェイスブックページ

写真=色とりどりのパラコードでオシャレなブレスレットができる

(ニュース和歌山/2019年8月31日更新)