人間は怖くないんだよ

 和歌山城公園動物園の魅力の一つが「動物との距離が近い」こと。「動物たちをこんなに近くで見られるなんて、すごい!」とお客様に喜ばれてます♪ しかし当園は、警戒心の強い草食動物が多く、本来、人間が近づくことは動物たちのストレスになってしまいます。

 そこでトレーニングに力を入れています。今回はその一つ、「馴致(じゅんち)トレーニング」を紹介します。ならす、なじませるためのもので、当園にいるほぼすべての動物に行います。普段から飼育員との触れ合いを通じて、「人間は怖くないんだよ」とじっくり伝えます。

 例えば、シカやヤギは動物自ら飼育員に近づき、手からえさを食べるように。続いて正面から首→顔→胸→前足と接触する部分を増やし、正面でしっかり触れるようになったらレベルアップです。後ろに立たれることを嫌う動物なので、横に立ち、背中→お腹→お尻→後足→ひづめの順に優しく声をかけながら、全身触れるようにします。

今回の担当:武田美奈代さん

 手で優しく触れることで動物との信頼関係も築けます。しかも、小さな傷や体の変化にいち早く気づけるほか、獣医による診断や治療がスムーズに行えるため、健康管理にも役立ちます。お客様に喜んでいただけ、信頼関係を築け、病気やケガから守れる。「一石三鳥」ですね!

 これからの季節はトレーニングにぴったりです。運が良ければ訓練の様子を見られるかもしれません。遭遇した時は心の中で静かに応援してください。動物たちにも伝わります。

 もう一つ、動物の特性や賢さ、身体的特徴を生かしたトレーニング…いわゆる「見せる芸」の訓練については、1月に紹介しますね。

写真=臆病なシカは中々触らせてくれません

(ニュース和歌山/2021年11月13日更新)