和歌山城近くで70年以上に渡り親しまれた音楽文化堂ピアノワールドが昨秋、和歌山市中へ移転しました。その新店舗に今年4月、新ホールがオープン。代表を務める福島雅明さん(62)が調律師歴39年の経験を注ぎ込み、音の響きを追求したこだわりの施設です。

生音を心地よく

──イオンモール和歌山近くの新しい店は、ピアノショールームにホールを併設しています。

 「念願だったホールはPA(音響増幅装置)がなくても、ピアノやヴァイオリンの生音が心地よく響く空間を目指し、私自身が設計しました。せますぎると音が割れ、広すぎると後ろの席まで音が届かない。ちょうどいい空間にしようと、170人収容としました。残響は適度に余韻が残る0・8秒ぐらいが良いと思いますが、このホールは無観客の状態だと1・2秒ほどで、満席に近い150人が入った5月7日のピアノ演奏会で0・8秒ぐらいでした。ねらっていた通りで、非常に満足しています」

「生音を美しいまま響かせるホールです」と福島さん

──音にこだわるお客さんにはうれしいですね。

 「換気システムも、演奏の邪魔になる音が全くしないものを採用。空気が流れるその一部に滅菌ゾーンを設け、コロナ禍でもお客様に安心して演奏を楽しんでもらえるよう万全を期しました」

調律師歴39年

──会社の創業は。

 「1948年です。オペラ好きの父・芳明が立ち上げました。勤めていた銀行の合唱団で、練習場に導入されたオルガンの音がずれていたものの、当時、和歌山に調律師がいなかった。それで自ら勉強し始めたのがきっかけで、ピアノ専門店を開いたそうです。私が店を手伝い始めたのは23歳だった83年。その前に1年間、調律師の養成所で学びました」

──来年で40年ですね。

 「演奏会時、あるいは個人宅にあるピアノのメンテナンスを請け負ってきたほか、現在は和歌の浦アートキューブにあるペトロフピアノの調律を担当しています。近年は世界最高峰と言われるスタインウェイ製の中古を仕入れ、古い部品を交換し、新品以上にあたたかみのある音色が出るよう修復して、安価に販売しています。〝ピアノを愛する人に満足してもらいたい〟、その一心です」

──今後は。

 「トップアーティスト、教室の発表会に出演する地元の子どもたち、すばらしい音色を求め、これまでは大阪の演奏会会場まで足を運んでいた音楽ファン…。新ホールでは多くの方に自慢の響きを味わってほしい。和歌山の皆さんに愛される場になればうれしいですね」

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和歌山市中573─8。073・488・3602。音楽文化堂HP

(ニュース和歌山/2022年5月21日更新)