街の中心にそびえるシンボル、和歌山城。今回は、和歌山市のペンネーム小坂さんから、城内の石に関する謎が届きました。「動物園から土手に上る石段の一部に、歯車のような加工がされています。これは一体?」です。

 石は、童話園と水禽(すいきん)園の入り口から南側へ進んだところにありました。確かに、ギザギザした歯車のような形がはっきり分かります。周りの石は特に加工されていませんが…。だれが何のためにこのような形にしたのでしょう?


きれいに割れた匠の証

 「動物園から土手に上る石段の一部に、歯車のような加工がされています。これは一体?」。和歌山城整備企画課の大山僚介学芸員に聞くと、「歯車のように見えるのは矢穴の跡、つまり石を割った際の痕跡です」と教えてくれました。

 矢穴とは、石を切断するために用いる矢を挿し込むための穴のこと。割りたい部分に、ノミを使ってミシン目状に穴をあけます。そこに木製、あるいは鉄製の矢を挿し、両端がとがっていない金づちでたたいて分割します。きれいに割れると、歯車のような跡が残ります。

 動物園一体はかつて南の丸という郭(くるわ)があり、和歌山藩初代藩主、徳川頼宣が来て以降に拡張されたエリア。古くても1621年以降の石と考えられます。

 城内の石垣をよく観察すれば矢穴の跡が分かる石が所々に残っています。大山学芸員は「中にはうまく割ることができず、側面に穴が残ったものもあるほど。ここまできれいに歯車状の形が判別できるものは珍しく、匠の技術ですね。これまで石垣の矢穴は確認していましたが、こんな観察しやすい場所の石段にあるとは…。私は今回初めて知りました。貴重な発見です」と驚いていました。

 和歌山城にはまだまだ見つかっていない謎が眠っていそうですね。

(ニュース和歌山/2022年7月2日更新)