絵は、江戸時代後期の熊野古道、中山王子(和歌山市滝畑)付近の風景です。

 熊野古道は、京都から熊野三山(本宮・新宮・那智)へ参詣するために人々が通った道です。京都から熊野への道は紀伊路(中辺路)、伊勢路、大峯路などがありました。歴代の上皇・貴族の大半が紀伊路を通って参詣し、その沿道に九十九王子がつくられました。本稿では王子社とその周辺の風景を道順に紹介していきます。

 王子社は、約二㌔ごとに設けられた休憩所と遥拝(ようはい)所を兼ねた神社です。熊野権現の分霊が祀られていると言われ、王子社に着くたびに遥拝し、熊野三山へ参る気持ちを高めました。

 絵図右下の小さな祠「中山王子」は、熊野古道が紀伊国に入って最初の王子社で、雄ノ山峠の北側に位置します。絵図中央の滝畑川は、紀の川水系ではなく、北流して、山中川、男里川(おのさとがわ)と合流し、大阪湾へ注ぎます。右上の滝畑川上流には、葛城修験の行場「おとなしの滝」が大きくえがかれ、その脇にお不動さん(春日神社)がたっています。

関西大学非常勤講師 額田雅裕

画=西村中和、彩色=芝田浩子

(ニュース和歌山/2023年1月28日更新)