海南市藤白に広大な庭園と酒蔵を構える中野BC株式会社。その代表銘柄と言えば「超久」です。この文字から、「長久では?」と思った人もいるかもしれません。「長久」と「超久」。よく似た名前の2つの酒の物語をひもとこうと、杜氏として蔵の日本酒醸造を一手に引き受ける武田博文さんにお話を伺いました。
長く久しく愛される酒
社の歴史をさかのぼると、創業時に造っていたのは、実は酒ではなく醤油。創業者の中野利生氏が幼い頃に通学路で見る酒蔵に憧れを抱きながら、1932年に開いた醤油蔵が原点です。
創業から一貫してこだわってきた「品質第一」「創意工夫」の精神にのっとり、醤油、そしてその後に手がけて焼酎製造では県内トップクラスの販売量を記録。1958年に酒造権を得て、中野酒造株式会社として念願の清酒造りを開始します。
その際、自社ブランドとして生み出したのが清酒「長久」です。「長く久しく愛されるお酒でありたい」と名付けた通り、地元の人に飲み継がれる味は濃醇で甘口。「和歌山はもともと味の濃いものが好まれ、ソースやケチャップの消費量が多い。土地によって好まれる食とお酒はリンクしていて、長久も同様にどっしりとした濃醇さが特徴です」
広く人気を博した「長久」からおよそ半世紀を経た2004年、「そのロングセラーを超す商品を」という想いで造り出したのが「超超久」、現在の「超久」です。「長久」と差別化するため、「超久」は純米や吟醸、さらに大吟醸として、より米本来の旨さを追求しました。
後口の良さへキレ味を追求
当初は飲食店や限られた酒屋のみでしか販売していなかった「超久」ですが、「至高の食中酒」として食事との相性を重視した味わいはすぐに人気に。
そんな中、登場から10年以上を経た17年、武田さんが杜氏に就任しました。超久を支えた味の骨格は変えず、五感を研ぎ澄ませ、目指す味に醸します。中でもより思いを込めたのが、「関西随一の辛口」と言われる『純米酒「超久」超辛』。旨味がありながらキリッとした飲み口が潔く、濃い味付けや油分の多い料理と合わせた時、「最後に口に残るしつこさを洗い流そう」と後口のキレ味にこだわりました。この意図は、甘めの長久にも生かし、長年の長久ファンからも「いい意味でキレが加わった」と高い評価を受けています。
歴史を語る「長久」と、新たな歴史を刻む「超久」。2つの味が次の時代へと続きます。
中野BC株式会社
海南市藤白758-45
電話 0120-050-609
長久庵賚10:00~16:30
(最終入館15:30 ※買い物のみは16:00)
㊡月曜(祝日の場合は翌平日休業)
(ニュース和歌山PLUS118号/2025年1月24日発行)
※記事は2025年1月24日時点です。
内容が変更になっている場合がございますので、ご利用の際は事前にご確認下さい。