和歌山市十番丁の「アポロ」の看板メニューは、焼きめしの上にカレーがかかった「焼きカレー」(600円)。意外性がありつつ絶妙にマッチする味わいで、30年以上愛され続けています。創業から80年以上の老舗で腕を振るう、4代目の林賢太朗さん(38)に伺いました。
きっかけは和医大の医師
アポロの〝焼きカレー〟は、時短アイデアから生まれました。「昔、店の前に和歌山県立医科大学があった頃、多忙な医師から『焼きめしとカレーを一緒に』と頼まれたことがきっかけです」。その後、医師や職員、学生たちの間で広がり、いつしか看板メニューになりました。
まろやかな甘みのカレー
おいしさの秘訣は、カレーの味わい深さです。「1日以上煮込み、冷蔵庫で2、3日寝かせて熟成させます。時間はかかりますが寝かせることで味がなじみ、まろやかさと深みが増します」 先代は辛口仕上げでしたが、現在は、甘みとまろやかさが特徴。玉ねぎとトマトをベースに中濃ソースやトマトソース、ケチャップ、そして砂糖少々を加えてコクを出しています。味の変化は客層の移り変わりに合わせたもの。「和医大があった時代に比べ、今はお子さんから年配の方まで、幅広く来店いただいています。皆さんに受け入れてもらいやすいよう、甘口にまとめています」
シンプル素材の焼きめし
もうひとつの主役である焼きめしは、材料を豚ミンチとネギだけに絞った潔い逸品。シンプルな素材から旨味を引き出すため、豚ミンチは仕込み段階で煮込んで味を馴染ませ、水分を飛ばします。このひと手間で、カレーと相性抜群のパラパラ焼きめしが完成。それぞれの良さが引き立つ、絶妙のバランスです。誰からも愛される名物は、手間暇かけて守られ続けられているのです。
価格は先代の頃からほぼ据え置き。物価高の波も、さまざまな工夫で乗り切ってきました。
お客様の7~8割が焼きカレーを含む〝メシ系〟を注文。近年は外国人観光客も増えました。「国内外の多くの人に食べてほしいですね」。和医大発祥の懐かしの味を、家庭的な温かさで、これからも提供し続けます。
アポロ
和歌山市十番丁20
TEL:073-432-3015
(ニュース和歌山PLUS123号/2025年6月27日発行)
※記事は2025年6月27日時点です。
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