九州地方を襲った熊本地震から1ヵ月あまり。震度7クラスが連続発生する前代未聞の災害に見舞われ、未だ収まらない余震が、被災者の不安を大きくしている。「遠く離れた和歌山から復興支援の力に」と、高校生や小学生が自分たちのできることを実践している。

 

慶風高生発案 携帯トイレ 生徒ら現地へ千個

16052802_itoilet 通信制の慶風高校(本校・紀美野町田)に通う生徒たちがアイデアを出し、2年前に商品化された携帯用簡易トイレ「行っトイレ!」。被災地で役立ててもらおうと5月13日、田原サヨ子校長や生徒代表らが現地へ持参した。生徒会長の奥村武人さん(2年)は「地震が起こった際にいた自宅が、壊れなかったけれども怖くて戻れない高校生がいると熊本の方に聞いたのがショックでした。少しでも避難生活の助けになれば」と思いを込める。

 「行っトイレ!」は、簡単に組み立てられる紙の箱、吸水シート、凝固剤などがセットになった商品。2014年、大災害時の備えについて考える中、当時の生徒たちが知恵を出し合った。「軽くてかばんに入るサイズで、持ち運びに便利なところが自信作です」と3年の﨑村彩加さん。用を足す際に周りから見えないようにと、腰に巻ける大きさの黒いビニールシートを同封した点と商品名は生徒の発案だ。

 生活関連商品の開発・販売を手がけ、田原校長が代表を務める朋久(和歌山市秋月)が商品化し、同年9月1日の「防災の日」に発売。今年2月には和歌山市が優れた特徴を持つ商品に贈る「チャレンジ新商品」に認定され、これ以降、備蓄用に買い求める自治会が増えている。

 4月の熊本地震では、同校テニス部で活躍した卒業生の実家が被災。また、以前から「大規模災害時には被災地に『行っトイレ!』を届けたい」との要望が生徒たちから出ていたことから、1000個を贈った。

 受け取った熊本南ロータリークラブの堀川貴史さんは「熊本の高校生や大学生を見ていても感じますが、東日本大震災を経験し、大変なときにはみんなで日本を支えていかなければならないという時代に育った若者たちのボランティア精神に感服します」。「行っトイレ!」は堀川さんが営む建築資材店で自由に持ち帰れるよう設置。「避難所のトイレを使えないという子どもさんがいる親御さんたちが利用されています。今後は避難所の備蓄品として活用していきたい」と話す。

 熊本地震後、﨑村さんは自宅で水の備蓄を始め、万が一の時、どこに逃げれば良いかを確認した。﨑村さんは「東日本大震災時は小学生で、まだ自分のこととして受け止められませんでしたが、今回の熊本地震では自分にも起こりうることだと危機感を持ちました。和歌山でも南海トラフ地震が言われています。被害を最小限に減らせるよう、しっかりと食料などを備えていきます」。田原校長は「天災はいつ起こるか分かりません。生徒たちには互いに助け合う心を育んでもらいたい」と願う。

 「行っトイレ!」は500円。和歌山城の観光土産品センターなどで販売。朋久(073・475・2882)。

写真=「避難生活の助けに」と生徒考案のトイレを贈った

手作りバザーで義援金 学童保育児童が企画

16052803_bazzar 紀の川市貴志川町上野山の学童保育こどもくらぶに通う小学生は5月10~13日、チャリティーバザーを開いた。売上全額の10万8656円を熊本県学童保育連絡協議会に寄付した。指導員の矢野美智子さんは「被災地で困っている同世代に贈るのに加え、手紙も書くことで、熊本を身近に感じられます。助け合いや思いやりの心を大切にしてほしい」と望んでいる。

 17年前から貴志川で活動を続けるくらぶは、中貴志小学校の104人が放課後に利用している。夏祭りでは手作りしたゲームコーナーやアクセサリーの店などを出しており、今回、その経験を生かして「高校生や大学生、大人たちが頑張っているので自分たちも何か力になりたい」とバザーを企画した。

 「いらっしゃーい!」。期間中、子どもたちの元気な声に地域の大人たちが続々と集まってきた。手作りの塗り絵や折り紙作品を販売する雑貨屋、子どもたちが調理するたこ焼き、巻き寿司、サンドイッチ、大判焼きなどの店がずらり。保護者もシュシュやビーズアクセサリー、ジャムなどを手作りして販売した。

 1年の西彩乃さんは「ジュースをたくさん買ってくれてうれしかった。熊本で暮らす子どもたちの生活が早く元通りになれば」。OBとして手伝った貴志川中学1年の川口伊吹さんは「授業ができなかったと聞いて、大変だと感じた。復興の力になれてうれしい」と喜んでいた。

写真=被災地の学童保育を支援しようと企画した

(ニュース和歌山2016年5月28日号掲載)