和歌山電鐵貴志川線のたま名誉永久駅長を題材にした児童文庫『ねこの駅長たま びんぼう電車をすくったねこ』が15日、発売された。執筆は、昨年6月に死んだたまを駅長に任命した小嶋光信社長で、「読み返すたびに思い出がよみがえり、涙があふれます。貴志川線やお客さん、全国の地方鉄道に希望の光を与えた活躍をまとめました」と完成を喜んでいる。

160723_tama 2007年に世界初の猫の駅長として貴志駅に就任したたまは、話題性と愛きょうで国内外から客を招き、廃線の危機にあった貴志川線の再生に貢献。その活躍を日記に書き留めていた小嶋社長がたまになりきって10年間の軌跡をたどった。

 駅前の売店で生まれ育ったころや、客とのふれあいなど、たまの生涯を振り返った内容。たまの活躍が励みになった乗客からお礼の言葉をかけられたこと、映画出演など駅長としての奮闘ぶりと成長の記録を、たまの目線でつづっている。冒頭には1歳当時の姿や駅長帽をかぶってのりりしい表情の写真を盛り込み、場面ごとにイラストを添えた。

 発売日には貴志駅で出版記念サイン会を実施。香川県から駆けつけた田中久美子さんは「たま駅長に会いたかったけれど、生前に来れなかったので、その様子を本で感じたい。人と動物、地域とのつながりの物語を通じ、子どもたちに優しさや郷土愛が伝われば」と声を弾ませていた。

 小B6判、160㌻。670円。和歌山県内主要書店で販売。角川つばさ文庫(0570・002・301)。

(ニュース和歌山2016年7月23日号掲載)