ぶらくり丁の老舗、島清金物店が3月末で130年の歴史を閉じる。明治時代に創業し、現在は5代目の島幸一さん(73)と妻、陽子さん(68)が店頭に立つ。幸一さんは「私も店も、生まれたときからこの町の栄枯盛衰を一緒に歩ませてもらいました。最後まで気持ちよくお客様を迎えたい」と語る。

 島清兵衛が1887年に同市橋向丁で開業した。なべ、かまや大工道具を扱い、1919年、ぶらくり丁に移転。幸一さんは68年、23歳で店に入った。「当時のぶらくり丁はまさに和歌山の顔。お客さんが絶えることがありませんでした」

 幸一さんが店を継いだ91年ごろは、郊外の大型店が安価な商品を大量に供給し始め、商店街全体の客数は伸び悩んでいた。幸一さんは「対抗策として割り引き販売を導入しました。開店前から客が並び、1日に200~300人が来店することもありました。大型店に資本力で負けても商売の歴史と心意気では負けない」。老舗専門店としての意地が心を支えた。

 しかし、割り引き販売が当たり前になると再び、客足は落ち着いた。10年前から近隣の老舗店が次々と閉店。自身の店も続けるのは困難と感じ、2年前、のれんを下ろす決意をした。

 閉店を知り駆けつけた客が「昔、嫁入り前にここで食器をそろえた」「小学校に上がる子どものお弁当箱を買いに来たことがある」と思い出話に花を咲かせる。幸一さんは「買ってくれたものを見て、『あそこにあんな店があったな』と思い出してもらえるのが一番うれしい。長い間、本当にありがとう」。

 午前10時〜午後6時。日曜、火曜休みで、第2日曜は営業。

写真=「最後までお客さんを笑顔で迎えよう」と幸一さん(右)

(ニュース和歌山/2018年1月20日更新)