駅などで行き先を教える音声案内装置、ボタンを押したり、人が近づいたりすると曲が流れ出す歌碑。これらの装置を総合的にプロデュースする全国でもめずらしい企業が和歌山市にある。同市塩屋の日本メディテックスだ。創業から30年近くで手掛けた装置は、全国に300以上。山口昭昌代表は「コンセプトの〝音声で人の役に立つ〟は今後も守り続けたい」と力を込める。

kahi 「和歌山市へようこそ。この音声案内装置はバス乗り場と市内観光のご案内をいたします」。市の玄関口、JR和歌山駅前のバスターミナルで観光客らを出迎える装置。このほか、般若心経が流れる高野山の慰霊碑、熊野本宮大社の多言語音声案内板も日本メディテックスが手掛けた機械だ。

 かつてテレビ局で音声を担当していた山口代表は1989年に同社を創業した。2008年には災害時にコミュニティFMの役割を担うNPO法人エフエム和歌山を立ち上げ、理事長を務める。

 製造した装置は「北海道江別市から沖縄・石垣島まで300は超えますね」。南海本線と高野線の急行停車各駅では点字音声案内装置が活躍。JR東日本のほとんどの駅で使われているエスカレーターの音声装置は、地方出身だからこそ思いついたアイデアが生きた。一般的には「ベルトにつかまってください」といったアナウンスが流れるが、「私の装置はそのエスカレーターに乗れば、どこ行きの電車が出るホームに行けるのかを案内します。都会の大きな駅でエスカレーターに乗り間違えると、戻るのに時間が掛かってしまいますから」。独特の提案で大手電機メーカーを抑えて採用された。

 観光地などの歌碑も数々手掛ける。ぶらくり丁の『和歌山ブルース』もその1つ。近づくと曲が自動的に流れ出す。歌碑プロジェクト代表の川崎博史さんは「この歌碑をきっかけに県外から来られた人と会話に花が咲くことも少なくありません。ヒットしたころを知らない年代の方々の耳にもメロディーが残っていると思います」。

 同様の歌碑は昨年も全国3ヵ所に設置した。直近では12月3日、福島県小野町に完成した舟木一夫さんのヒット曲『高校三年生』。作詞者、丘灯至夫(おか・としお)さんの故郷で、今年、生誕100周年を迎えるのを前に建てられた。毎日夕方5時に町内放送でメロディーが流れるほど地元では愛着のある曲。丘灯至夫顕彰事業実行委員の籠田まき子さんは「歌碑はこの曲と共に偉大な作詞家がいたことを知ってもらう機会になる」と喜ぶ。

 30年近くこの仕事に携わってきた山口代表が印象深いと語るのが、ビッグ愛の各階エレベーター前に点字音声案内装置を設置した際、視覚障害者からもらった言葉だ。「機械から流れる『ここに点字案内板があります』との言葉が、『点字での案内を必要としている人が社会にいるということをPRしてくれているのがうれしい』と言ってもらえたんです」とにっこり。「緊急時に災害放送局にもなるエフエム和歌山を始めたのもそうですが、音声で役に立ちたいとの思いだけです。これからも人に優しい音声を提供していきたい」と意気込んでいる。

写真=先月完成した『高校三年生』の歌碑の前で

(ニュース和歌山2017年1月14日号掲載)