和歌山市出身 土山正人さん『お帰り 寅さん』 照明担当

 今年度の日本アカデミー賞優秀照明賞に、『男はつらいよ お帰り 寅さん』で照明を担当した和歌山市出身の土山正人さん(55)が輝いた。「松竹の入社試験で〝アカデミー賞を取ります〟と作文に書いた記憶がある。いつもは裏方ですが、授賞式で華やかな舞台に立たせてもらい、心配をかけた親、地元で応援してくれる仲間に恩返しできたかな」と声を弾ませた。

 和歌山工業高校時代から映画に魅了され、ぶらくり丁にあった築映でもぎりのアルバイトをしていた土山さん。いつかこのスクリーンに自分の名前を流したいと夢見て、横浜放送映画専門学院に進学し、フリーを経て松竹に入社した。

 山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズには1986年公開の37作目から参加。この経験を買われ、今回の受賞作品『お帰り寅さん』で照明スタッフ9人を束ねる大役を任された。

 4Kデジタル技術で修復された過去の名場面と、新しく撮った映像が交互に登場する同作では、質感や色調を違和感なく合わせることが求められた。昔の照明機材で当てたような風合いを、LEDライトを使って巧みに表現した。「責任重大な仕事。自分の照明人生をかけ、先輩からの明かりを受け継ぎました」

 受賞を受け、和工時代の恩師、杉野正人さんは「学生時代から映画の知識が豊富で、情熱にあふれ、人情味があった。今や日本を代表する映画人。苦労もあったと思うが、同郷であることを誇りに思います」。

 今年8月公開予定の山田監督作品『キネマの神様』でも照明を担当。コロナ禍で徹底した感染対策の中での撮影を経験した。「映画をはじめ、エンターテインメントは夢と希望をあたえるもの。苦しい時に少しでも人々の生きる糧になれば」と力を込めた。

写真=「いつもならスポットライトは当てる側です」と土山さん

(ニュース和歌山/2021年3月27日更新)