買い物しながら運動不足解消や認知症予防を図るショッピングリハビリが、和歌山市小雑賀のスーパーセンターオークワセントラルシティで始まった。店内にある通所型介護施設「ひかりサロンりゅうじん」が県内で初めて取り入れ、お年寄りたちが買い物を楽しむ中で思わぬ歩数をかせぎ、笑顔を見せている。同サロンの理学療法士、龍神正導さんは「体を動かさないでいると引きこもり、気持ちがふさぎがちに。色んな商品を選んで、心をときめかせてほしい」と話している。

ひかりサロンりゅうじん スーパーで運動不足解消〜認知症予防にも効果

袋に入れるところをスタッフが笑顔で見守る

 タクシーでスーパーに到着した利用者たち。サロンで軽い運動を行った後、それぞれ買い物を始める。足腰がつらい人向けには、持ち手が高く、前方向に体重をかけられる設計で、背筋を伸ばして歩ける専用カートを準備。また、スタッフが重いものをカートに積んだり、袋に購入品を入れたりとサポートする。

 利用者の一人、川野和代さん(88)は自宅近くにスーパーがなく、いつも親戚に買い物を頼んでいた。「やっぱり自分の目で見て買い物をするとワクワクする。きょうはステーキ用のお肉と飲み物を買いました」とにっこり。奥野克美さん(89)は「週2回ここに来るのが楽しみ。運動して、おしゃべりして、買い物して。リハビリという感覚はないですね」と喜ぶ。

 ショッピングリハビリは2015年、島根県のデイサービス事業者が始めた。スーパー内を歩き、必要なものを考え、支払額の計算をすることが、運動不足解消や認知症予防に効果があると評判になり、北海道、埼玉、長野、京都、兵庫と取り入れる事業所が増えている。

 これに着目したのが、ひかりサロンりゅうじんの龍神さん。同市の整形外科でリハビリを担当しており、高齢者に「元気になったら買い物に行けるね」と声をかけていたが、自宅から歩いて行ける店が閉まってしまったとの人が増えてきた。「買い物自体がリハビリなら、利用者は楽しんでくれるはず」と導入を決め、セントラルシティと連携し、サロン利用者限定で7月にスタートした。

買い物後のおしゃべりも楽しみのひとつ(右が龍神さん)

 利用者は連日、5~8人。龍神さんは「普段運動をあまりしないお年寄りに、1日2000歩を目指そうと言うと、『そんなんしんどいよ』『歩かれへん』と、弱音を吐く人が多い。でも、買い物だと夢中になって、軽く3000歩を超える人ばかり。楽しくて疲れを感じないようです」。リハビリを見守るセントラルシティの小松和昭店長は「利用者の方々が歩きやすいよう、特売日でも通路に商品を置かないようにしました。スタッフ全員がこれまで以上に気を配り、利用者さんに限らず高齢者の方々が買い回りやすい売り場環境を、より意識するようになりました」と話す。

 リハビリに詳しい宝塚医療大学和歌山保健医療学部の上城憲司教授は「献立を考えたり、食材を選んだり、金銭の受け渡しをしたりと、買い物には頭を使う工程が多い。できない部分だけ補ってあげることで、脳や体に良い刺激をもたらします」と効果を評価している。

 ショッピングリハビリはサロン利用者以外も1度の体験可。また、10月23日㊏午前10時、同サロンで、同市と県理学療法士協会による「WAKAYAMAつれもて健康体操体験会」が開かれる。無料。定員30人。いずれも詳細はひかりサロンりゅうじん(090・1705・3706)。

(ニュース和歌山/2021年10月23日更新)