歴史や古典芸能から社会問題まで、幅広いテーマで作品を発表した和歌山市出身の作家、有吉佐和子。没後40年の今年、有吉の魅力、功績を再発信する動きが起きている。研究者がルポを豆本『輪島の漆器』にして出版し、地元劇団が『三婆』を11月に上演する。本をまとめた岡本和宜さんは「有吉の愛した輪島塗の復興に協力できるよう、収益は義援金として寄付します」と力を入れる。

『輪島の漆器』 初単行本化

収益は義援金に

「今後も単行本化されていない作品をまとめます」と岡本さん

 豆本は、和歌山市片岡町の刺田比古神社禰宜で、有吉作品を研究する岡本和宜さんが企画、命日である8月30日に出版した。有吉は全集がないため、どの作品がどの書籍に掲載されているのか分かりづらい。岡本さんは以前から未発表作品を中心に単行本化を検討していた。

 そんな中、元日の能登半島地震で、輪島塗の工房がいくつも大きな被害を受けたと知り、「60年以上前の輪島塗に関するルポを書籍にして販売し、収益を復興の義援金にしよう」と思い至った。

 『輪島の漆器』は1958年、有吉が輪島の工房の様子や、プラスチック製品が普及する中、伝統を守るために奮闘する若手職人たちの姿を紹介したルポ。同年の別冊文藝春秋に掲載された。

有吉が愛用した着物の柄を表紙に

 書籍発行に向け、岡本さんは出版社「書肆(しょし)青庵」を立ち上げ、ルポと、愛用の漆器や茶道具の写真を掲載した。「和歌山を訪れたファンがお土産に持って帰りやすいように」と縦10・5㌢、横7・4㌢の豆本サイズにした。

 87㌻、1冊1500円。発行は500部。同市伝法橋南ノ丁の有吉佐和子記念館で販売中。岡本さんは「気軽に手に取ることができる大きさです。ガラスケースに入った資料も貴重ですが、カバンに入れて持ち運びしやすい豆本から、有吉作品を身近に感じてもらえればうれしい」と願っている。

 詳しくは青庵(073・422・6576)。

 

 

劇団ZERO『三婆』を上演

傑作喜劇 11月に

           和気あいあいとした役者陣

 1961年発表で、何度もテレビドラマや映画、演劇となった小説『三婆』を、和歌山を拠点とする劇団ZEROが11月に和歌山城ホールで上演する。島田忠代表(写真前列中央)は「昨年1月に朗読劇を、今春にダイジェスト版を上演したところ、好評でした。有吉さんが亡くなって40年、改めて作品を広く知ってもらうため、全編を披露します」と意気込んでいる。

 舞台は1963年の東京。金融会社社長が急逝し、本妻が義妹、愛人と共同生活を送るはめになった。いがみ合いながら暮らす3人と、周りの人が巻き起こす騒動を描いた喜劇だ。

 市原悦子や草笛光子、大竹しのぶらが演じてきた本妻の松子は今回、島田代表が務める。「社会派のイメージが強い有吉作品の中で、気軽に笑える一作です。ありえない組み合わせの3人に、どこか共感できるところがあるので、小難しく考えずに楽しんでほしいですね」と笑顔を見せる。

   本番へ向け、練習に熱が入る

 11月2日㊏午後5時、3日㊐午後2時、和歌山城ホール小ホール。2000円、当日2500円。同ホールや、有吉佐和子記念館、和歌の浦アート・キューブほかで販売。問い合わせは川端さん(090・4763・4709)。

(ニュース和歌山/2024年9月28日更新)