和歌山県高等学校野球連盟 専務理事(理事長) 髙津 亮さん(50)

 数々の熱狂と興奮を生んだ和歌山市毛見の紀三井寺公園野球場が1965年に誕生し、今年〝還暦〟を迎える。野球王国和歌山における、いわば聖地でもある同球場の「これまで」の歴史や伝統、そして近年の酷暑に対する、大会運営の「これから」のあり方について、県高校野球連盟の髙津亮専務理事に聞いた。

〝還暦〟迎えた紀三井寺球場

これまでの 〝和歌山高校野球〟

──紀三井寺球場が60周年。これまでの県内高校野球の伝統をどのようにふり返りますか?

 「夏の甲子園の前身でもある、全国中等学校優勝野球大会のころに活躍した県立和歌山中学、海南中学、海草中学から始まり、箕島、智辯学園和歌山と、日本を代表するチームが登場し、和歌山の野球文化を引っ張ってきてくれました」

──紀三井寺球場は、現パ・リーグの県出身監督3人にとってもゆかりの地です。どんな環境が未来のスターを育ててきたと思いますか?

 「和歌山大会は紀三井寺球場1会場だけの開催で、全試合をテレビ、ラジオ、ネット配信で中継されます。他県とは違い、県民の皆さんに注目される環境が、選手たちの実力向上につながっているのではないでしょうか」

──ご自身の紀三井寺球場での思い出は?

 「2012年夏、当時監督を務めていた那賀高校と、智辯和歌山の決勝戦です。前年の秋季近畿予選で智辯に勝利し、夏も再度勝利をと臨んだ決勝戦でしたが、延長14回までもつれ込んだ結果敗退。甲子園を目前にして敗れた選手たちの姿が、今でも忘れられません」

──今夏の和歌山大会ではどんなドラマを期待しますか?

 「春の選抜高校野球大会に出場した智辯和歌山と市立和歌山に対し、どのチームが勝負を挑み、決勝まで上がってくるのか、楽しみですね」

 

 

これからの 大会運営について

──酷暑に対し、県高野連で取り組んでいる対策は?

 「5回終了後、水分補給や体の熱を冷ますため、8分間のクーリングタイムを設定したり、ベンチに小型のクーラーを設置します。これ以外にも、審判員には熱がこもってしまう黒い靴ではなく、白い靴を支給し、応援団や観覧席にもミストシャワーをまいたりと、会場内のだれもが熱中症にならないよう、対策を講じています」

──少しでも快適に大会を楽しめるよう考えられているんですね。

 「はい。このほか、過去に加盟校の監督として夏の紀三井寺での采配経験がある役員を『チーム付き』として配置します。この人たちには、球場入りやシートノックなど準備のサポートから始まり、監督や選手に対し、アドバイスや試合における注意事項などを伝えてもらいます。さらに試合中、熱中症やケガをした時、真っ先に駆け寄って対処するなど、ゲーム運営の中心となる役割を新たに用意しました」

──最後に、専務理事が目指す「理想の高校野球和歌山大会」とは?

 「県の代表校になれなかった34チーム、すべての選手が最後のアウトを取られた瞬間に『和歌山で野球をやって良かった』と思えるような大会であってほしい。『甲子園』はとても大きな目標ですが、何よりみんなに野球を楽しんでもらいたい。その気持ちが強くありますね」

(ニュース和歌山/2025年7月5日更新)