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 イノシシやシカによる農作物被害が大きくなり、対策として県が狩猟免許取得者を増やそうとする中、ジビエ肉の自給に向け捕獲に力を入れるグループがある。20〜40代の10人でつくるギャートルズだ。リーダーの溝部名緒子さんは鳥獣や魚の捕獲経験を生かし、和歌山市加太に5月、「自然体験・冒険セミナーハウス・ハンターズイン」をオープン。11月には猟師養成セミナーを始める。

 耕作放棄地の増加や山間部の開発、狩猟者減により、イノシシやシカが人家近くに出没し農作物を食い荒らす被害が増えている。県内では10年前に2億9000万円だった被害額が、昨年は3億4000万円を超えた。県は今年7月に狩猟の魅力研修、11月からは狩猟体験研修を初めて開き、有害鳥獣駆除に当たる狩猟者確保に力を入れる。

 イノシシ肉をさばいたことや猟への同行経験がある溝部さんは、「食糧は自分で」と昨年、銃とわなの免許を取得した。同じころに免許を取った人たちと昨秋、ギャートルズを結成。わなの勉強会を開いては自分たちで作り、仕掛けてきた。「ホームセンターで手に入る材料で組み立てます。メンバーのうち、わなにかかったイノシシの凶暴さ、力強さを知っているのは私だけだったので、気づいた点をアドバイスします」。わなはより強固に改良し、数ヵ所に設置。10頭ほど捕獲し、徐々に成果を上げてきた。

 田畑の被害対策に、わな免許を昨年取得した紀の川市の吉田安葵子(あきこ)さんは「猟に同行した時、イノシシを追い出した人から『そっちへ行ったぞ』と声が聞こえ、猟を実感できました」。和歌山市の津田真宏さんはイノシシ料理を食べた経験から、自分で捕獲するためにわな免許を取った。「足跡を探してわなを仕掛けます。イノシシとの知恵比べ」と話す。

 こうした活動に県農業環境・鳥獣害対策室は「狩猟者の高齢化で銃を持つ人は年々減少し、それにつれ農作物被害が増加しています。若い人が積極的に活動してくれれば、被害を減らせる」と期待をかける。

 一方、溝部さんは、イノシシやシカ、また、海や川で魚やイカ、エビなどを捕ってきた経験を生かそうと、5月にハンターズインを開設し、海や森を満喫するアウトドアセミナーを実施。イノシシ猟が解禁される11月には、ハンター養成セミナー「マタギ体験・猟師見習い」を始める。狩猟者でつくる猟友会メンバーの協力を得て、けもの道を歩き、イノシシやタヌキの足跡から大きさや進んだ方向を予測。鳥獣解体もメニューに入れる。

 溝部さんは「海、山を体験するセミナーは、家族連れが興味を持って自然とのふれあいを楽しんでくれます」と満足そう。ギャートルズでは女性メンバーとの交流から、食が話題になることも多い。ジビエ肉は部位に応じてミンチにするなど、無駄にならないよう工夫する。今後も若手を増やし、「猟友会メンバーから指導を受けたり、こちらから新しい食べ方を提案したりと交流を深めたい」考えだ。

 狩猟体験研修は県農業環境・鳥獣害対策室(073・441・2906)、ハンター養成セミナーほかはハンターズイン(同463・4481)。

写真=ギャートルズで作ったわなを確認に来た溝部さん

(ニュース和歌山2016年10月29日号掲載)