取材への行き帰り、学校の前を通る時、以前は、校庭から聞こえる子どもたちの元気な声に耳を澄ませていました。しかし、最近は「敷地を囲うこのブロック塀、ちょっと古そうだけど、強度は大丈夫?」と心配してしまいます。昨年6月の大阪北部地震で学校の塀が崩れ、小学4年生の尊い命が奪われた悲しい事故のためです。

 これ以降、全国的に塀の安全調査が進められているほか、危険な塀の撤去や改修に対する行政の補助が増えています。

 和歌山市は事故翌月、危険なブロック塀の撤去やフェンスへの改修などに対する補助制度を拡充させました。制度自体は熊本地震をきっかけに、2016年度に設けられ、初年度は2件、2年目は32件に交付。今年度は7月に上限をそれまでの10万円から40万円に増やしたこともあり、昨年12月の締め切りまでに175件の申請がありました。19年度、20年度も同様の補助制度を実施したい考えです。

 同市は加えて1月15日から、市立の幼稚園、小・中学校と義務教育学校の全通学路を職員が2人1組で歩き、ブロック塀の所有者に、塀の安全点検を呼びかけるチラシを配って回っています。計81校・園の周辺を2月末までに回る計画です。

 小学校、中学校のほとんどは避難所に指定されています。通学路は万が一の際、地域の人たちが避難所へ移動する際に使う大切な道でもあります。避難する場所、また、そこまでの道は複数考えて頭に入れておくことが大切ではありますが、メーンルートの安全確保という意味でも、こうした通学路の安全を守る取り組みは歓迎です。

 ニュース和歌山1月3日号で、古くからある神社が津波や河川氾濫などの自然災害から安全な場所にあるケースが多いことに着目し、防災に役立てようと考える神戸市立工業高等専門学校の髙田知紀准教授と、先人が残した災害に関する石碑や古文書を防災に生かそうと調査する県立博物館の前田正明学芸員らの取り組みを紹介しました。2人に共通するのは、自分たちの研究を、地域に目を向けるきっかけにしてもらいたいとの願いでした。

 住んでいる地域に目を配ることが防災の基本であり、第一歩です。行政にはブロック塀をはじめ、ぬかりない安全対策をお願いする一方、私たちも任せきりにするのではなく、地域を歩いてみる。そこから始めてみませんか。 (西山)

(ニュース和歌山/2019年1月26日更新)