2015011789_nonsleep

 とある夜、男の子は眠れなくて、羊を数えて眠ろうとしていました。「羊が1匹、羊が2匹…」。男の子は頭の中で羊を思い浮かべながら順番に数えていきます。

  すると途中で「…あれ? 羊が7匹から数えられない…?」。男の子は困っていました。すると、目の前に羊の妖精が現れました。「僕は羊の妖精モフン。子供 達を眠らせるために毎日〝夢の柵〟を越えているんだ。夢の柵を僕達が飛び越えると、子供達を夢の中へ連れて行くことが出来るんだ。でも、僕達は子供達の前 で姿を見せちゃいけないんだ」

 男の子は7問しました。「そうなんだ…でも、どうして僕の前に現れたの? 姿を見せちゃいけないんでしょ?」「実はね…君が眠れないのは、僕達の仲間のせいなんだ」

 羊の話によると、夢の柵を越える羊の順番があって、7匹目の羊の体が弱いせいで、最近柵を越えられなくなっているから、男の子は眠れないというのです。「そうだったのか…」「ごめんね。僕のせいで…」。7匹目の羊は謝りました。

 すると、男の子はひらめきました。「そうだ! 僕が君の夢の柵を越えるお手伝いをするよ!」「え!?」

  他の羊もたくさんうなずきました。でも、7匹目の羊は納得していないようで…。「でも、僕…体も弱いし、自信もないし、お手伝いしてくれなくても…」「大 丈夫だよ! 特訓すれば必ず出来る! 僕がついてるよ!」。男の子は胸をどんと張り、自信満々に言いました。「君がそこまで言うなら…僕、頑張ってみる よ!」

 こうして、男の子と7匹目の羊は、夢の柵を飛び越えられるための特訓を始めました。走ったり、飛んだり、力をつけたり…たくさん練習を繰り返して、とうとう練習の成果を見せる時が来ました。「大丈夫! 君ならいけるよ!」「うん、僕がんばる!」

 そして、羊のカウントが始まりました。「羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹、羊が5匹……」。羊は順番にきれいに飛んでいきます。そして、7匹目の番がやってきました。「羊が……7匹」

 ぴょ──ん!

  7匹目の羊は、見事に柵を飛び越えることができました。「すごい! 出来たよ! やった!」「僕、飛べた! 君のおかげだよ、ありがとう!」。こうして、 羊達は無事、全員が柵を飛び越えられるようになりました。羊達と男の子はとても大喜びし、その夜はみんなでたくさん遊びました。

 ──と、男の子は目を覚ましました。「夢だった…のかな?」。男の子はそう思いました。そばの机に『ありがとう 羊』と書かれた手紙が置かれていました。
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 おはなしボランティアきいちご代表の北裏祐子審査員…羊が柵を越えられないために眠れない男の子がいます。落ち込む羊を前向きな考えで励まし、一緒に特訓するところがいいですね。羊の妖精との会話文を上手に使っているところがすてきで、スムーズにおはなしの世界に入って行けます。

(ニュース和歌山2015年1月17日号掲載)