眼光鋭く威厳に満ちて

160910_yoshimune この肖像は衣冠束帯姿の吉宗を描いた作品で、最近テレビや雑誌で吉宗の業績を紹介する際によく使われています。眼光鋭く威厳に満ちた様子がうかがえます。大きな福耳が特徴ですが、これは同じように福耳だった徳川家康の曾孫であることを強調するために、あえて大きく描いたと考えられます。

 吉宗は体格も大きく、身長約百八十㌢ありました。当時の平均身長が百
五十七㌢だったので、人が大勢いる時でも頭一つ抜けていたようです。また、力もかなり強かったと言われており、若い頃には、父・光貞が呼び寄せた相撲取りを投げ飛ばしたというエピソードが伝わっています。

 吉宗は光貞の四男で、側室の子であったことから、不遇な幼少期を過ごしたと考えられがちですが、三歳で病気にかかった時に、藩の最高位の医師に診察されていることから考えて、軽んじられる存在でなかったことは間違いなさそうです。なお、この時の吉宗は薬を服用せずに回復しており、丈夫な子どもであったことが推測できます。

 吉宗は六十二歳で隠居し、寛延四年(一七五一)六月二十日に六十八歳で亡くなります。歴代十五人の将軍の中で四番目の長寿を誇り、晩年まで鷹狩りを行い活動的に過ごしました。(和歌山市立博物館学芸員 佐藤顕)

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徳川吉宗の将軍就任三百年にあたり、ゆかりの場所、文化財を毎週土曜号で紹介します。

(ニュース和歌山2016年9月10日号掲載)