160914_1a なるコミの外来食堂では、薬膳アドバイザーの資格を持つ榎本和男料理長(56)が県産食材をメーンに扱い、それぞれの効能を引き出す薬膳料理で出迎える。一般的に地味な印象のある薬膳料理だが、ここでは実にバラエティ豊か。健康を願う榎本料理長の優しさがスパイスとなり、どの料理にも生きている。

副菜は食べ放題

 揚げたてのレンコンコロッケや山芋の磯辺揚げ、色鮮やかなサツマイモのごまマヨネーズ和え…。オープン直前、食堂のカウンターに次々とできたての料理が大皿で並ぶ。副菜のそばには「胃腸元気」「美肌」「冷え性対策」のプレート。それぞれの効能について丁寧に記し、親切だ。

 「薬膳ランチは基本、肉か魚のメーンとご飯にスープ、副菜が付きます。人気はこの大皿の副菜。8〜10種類あり、おかわり自由です。『野菜がたくさんとれる』と、皆さんもりもり食べていかれます。メーンも全て、昔から中国で伝わる中医学の理論に基づいて作っています」

ヘルシーさが人気

 実家の寿司店で10年。その後、スーパーマーケットの総菜部門で働いていた時、1ヵ月の入院生活を経験した。看護師の懸命な姿に心を打たれ、宇都宮病院に就職。ケアワーカーとして迎えた4年目、外来食堂の新設に伴い、調理経験が買われ、料理長に抜てきされた。健康を意識した病院ならではの食事を出すため、薬膳アドバイザーの資格を1年半かけて取得した。

 「食材の効能を最大限に引き出すようにしています。薬膳は生薬や薬草の苦いイメージがありますが、旬の食材で、季節ごとの体調の変化に合わせた食べやすい味にしています。9月は残暑が厳しいので、食欲増進効果のある牛肉と紫キャベツの生春巻き、夏バテに効く穴子の梅しそチーズ揚げなどを出す予定。『ヘルシーでおいしい』と、患者さんの家族以外に地域の方々や、遠くからも健康志向の女性が何度も来てくれます」

160914_1b 月1回開く料理教室は、毎回定員を超える人気だ。客には旬の食材が秘めた効能や、食べ方を伝えることもある。 「ここまで来られない身体の不自由な方、一人暮らしの高齢者の方にも味わってもらうため、いつか病院の訪問診療に合わせて薬膳弁当を届けたいです。身体に優しい味を和歌山で広めていければ」

【なるコミの外来食堂】

 和歌山市鳴神505-4、宇都宮病院内。午前11時〜午後2時。日祝定休。☎073・471・3148。

(ニュース和歌山2016年9月14日号掲載)