田辺市龍神村と中辺路町の境にある笠塔山には古来、妖怪が棲み、旅人を驚かせた。無人の馬場を夜な夜な人の乗っていない白い馬が駆け抜け、木偶茶屋という人形芝居小屋が現れ、にぎやかに芝居を演じるなど奇怪な出来事が続いていた。

 噂を聞いた安倍晴明は調伏の祈祷を行った。妖怪は、怒り狂って大雨を降らせた。晴明は杖を柱、笠を屋根としてお堂を造り、護摩を焚いて三日三晩祈祷して妖怪を滝壺に閉じ込めた。岩に梵字を刻み、「文字が消えるまで、滝壺から出ることを許さぬ」と言ったという。

 猫でもまたげる滝だという笑い話のような滝名の由来。おどろおどろしい伝説には似合わず、滝には小さな虹がかかっていた。妖怪は今も閉じ込められたままだろうか。

(ニュース和歌山/2018年6月9日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。