昔、滝のそばで老婆が一人暮らしていた。重い年貢に苦しむ村人たちは、滝の上に隠し田を作っていた。ある年、役人が訪れ、「辺りに田んぼはないだろうな」と聞くと、老婆は村人の暮らしを案じ、「ありません」と答えた。老婆の一言で、隠し田は見つからず、村人は胸をなでおろした。

 数年後、再び役人が来て、滝壺を流れる一本の藁に気がついた。役人は、老婆に藁を見せ、詰問したが、老婆は「田などありません」。役人は滝の上に隠し田を発見し、怒って老婆の首をはねてしまった。村人たちは涙を流して老婆に感謝し、祠を建立して霊を慰めた。

 滝名はこの老婆に由来する。小さな滝であるが、雨の後に訪れると、ごうごうとけたたましく落ちて見事だった。

(ニュース和歌山/2018年6月16日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。