太平洋に突き出た紀伊半島の縁をなぞるように走るJR紀勢本線。約200㌔ある線路の35%、白浜─新宮間では50%が津波浸水想定域を走る。鉄道の防災を研究する和歌山大学の西川一弘准教授は「紀勢本線は特に地震から津波到達までの時間が短い。観光で出かけることも多く、慣れない土地で命を守るための知識を持っておいてほしい」と強調する。

和大 西川准教授に聞く

 東日本大震災を機に、鉄道防災について調査を始めた西川准教授。注目したのは、津波に電車や駅が流されながらも、車両に乗ったまま命を落とした人がいなかったことだ。「津波到達まで時間があったこと、司令部からの指示でなく、運転士が土地勘のある乗客の声を聞き入れて避難誘導したことなどが背景にあると考えられます」

 この教訓を、南海トラフ大地震への備えに生かそうとJR西日本和歌山支社などと協力し、地元住民を交えた避難訓練を実施(写真)。地震で緊急停止した場所から少し走れば高台に行ける場合があり、乗務員が扉を開けるまでは勝手に開けないなどの注意点を伝えたほか、電車の床から地面まで約160㌢の高さを、車内のハシゴを出して降りる訓練を行った。

 ニュース和歌山配布地域でも、紀三井寺から下津にかけて津波浸水想定域に線路がある。「扉を開けるまでは乗務員の指示に従い、それ以降は客が主体的に避難することが大切。紀勢本線は線路沿いの電柱に高台の方向を示す矢印が付いている。地元の人は率先して誘導してほしい」と望んでいる。

(ニュース和歌山/2018年10月20日更新)