阪神・淡路大震災からまもなく24年。災害時の備えとして、飲み水の確保が課題の一つだが、これを解決するため、紀の川市上丹生谷のアクアテクノロジー・プラスが貯水タンク付き浄水器「助水タンクTAMEZOU」を開発した。停電しても手動のポンプでためておいた水を飲料水に変えられるのが特徴。防災士資格を持つ戸口茂幸代表は「水の汚れだけでなく、災害時の不安も取り除ける。大量生産できる体制を整え、一家に一台を目指します」と意気込む。

紀の川市の防災士 戸口茂幸さん タンク付き浄水器開発〜手動ポンプ使い停電時も可

 TAMEZOUは常時、150㍑の水をタンク内にためられる。水道の水量計と給湯器の間に取り付け、平常時は浄水器として使用。災害が起こり、水道が止まった際はタンク内の水を飲料水として利用できる。

 最大の特徴は、自転車の空気入れのような手動ポンプを備えており、停電時にも使えることだ。戸口さんは「災害直後で電気が来ておらず、行政の給水支援もまだの一番大変な時に使えます」と胸を張る。

 戸口さんが防災に深い関心を持ったのは、1995年の阪神・淡路大震災がきっかけだった。当時、きんでんに勤めており、神戸市で電気の復旧作業に当たる中、飲み水の確保に苦労する被災者の姿が目に焼き付いた。

 「テレビのニュースだと、給水車からペットボトルなどに水を入れるシーンがよく映されますが、実際には水をもらえるまで何時間も並ぶ人も多い。家が遠い人は重い水を運ぶのも大変。お年寄りや障害のある方、赤ちゃんがいる女性などは非常に苦しい」

 その後、紀の川市で農業をしながら防災士資格を取り、同市防災リーダー会や粉河社会福祉協議会防災ボランティア会の会長として、地域の防災活動に取り組んできた。

 農業のかたわら、4年前に会社を立ち上げ、TAMEZOUを開発。昨年、中小企業の優れた技術を認定する県の「1社1元気技術」に登録され、特許も申請した。

 最近、備蓄する水や食料は10日分が推奨される。1日に必要な水は1人3㍑と言われ、4人家族の場合、10日分だと120㍑。2㍑のペットボトルで60本だ。「これだけの量、家の中に備蓄するのは大変。この設備なら日常の浄水器に防災を組み込める」と戸口さん。

 昨年5月、試作品を自宅に取り付けた和歌山市の男性は「地震の揺れを感知すると弁が自動で閉じ、水道管から濁り水がタンク内に流れ込まないようになっているのがすごい。万が一の際は困っているご近所の人たちにも役に立つはず」と話す。

 今は大量生産し、低価格で提供できる体制づくりに力を注ぐ。「大手住宅メーカーに標準装備として取り入れてもらうのが目標の1つ。災害後の水不足解消を目指し、微力ながら社会に貢献したい」と思い描いている。

 戸口さん(0736・67・8088)。

写真=「手動ポンプで停電している時でも浄水が可能」と戸口さん

(ニュース和歌山/2019年1月12日更新)