《回答者》
脳神経外科
貴志川リハビリテーション病院
亀井 一郎院長

 「高次脳機能障害」、最近よく耳にする言葉ですね。

 まず、たとえ話ですが、海洋生物の頂点に立ち、体力的にも同等のホオジロザメとシャチが闘うとどちらが勝つと思いますか? 答えはシャチです。何度挑んでもホオジロザメはシャチに勝てません。理由は、サメは本能で活動しますが、シャチにはコミュニケーション力を駆使した社会性があり、家族で協力して闘うからです。この社会性を維持する能力を高次脳機能と考えてください。

 脳損傷後、リハビリにより運動能力は改善しても、社会性を失ったままでは人間は社会に戻れません。脳梗塞や脳外傷により被害を被った脳の部位によって、会話能力を失ったり(失語)、見えていても聞こえていても物事を認識できなくなったり(失認)、企画力や着衣などの手順がわからなくなったり(遂行機能障害や失行)、視界の左半分を無視してしまったり(その患者さんにとって左半分の世界が無い! …左半側空間無視)、相手を思いやる気持ちを持てなくなったりします。

 このような高次脳機能障害を克服するにはリハビリテーション治療が必須になるのです。高次脳機能訓練は症状に応じて様々あり、社会復帰を目指す患者さんを支援します。

(ニュース和歌山/2021年9月25日更新)