さっくりとした硬めのシュー皮にアーモンドの香ばしさ、中には濃厚ながら、後味すっきりのクリームがたっぷり−−。 地元で愛される味に迫る「和歌山味物語」、今回は和歌浦・明光商店街にある老舗、春栄堂の「シューパリ」です。週末には1000個以上が完売する人気のシュークリーム。25年前に発案した3代目、南克勲社長に思いを聞きます。

 

パティシエの向上心に火

 創業は昭和元年(1926年)。明光通りから少し入った場所で、克勲さんの祖父、春次さんがまんじゅうやもちを販売する和菓子店を構えました。90年代に入ってからは洋菓子も提供しています。  

 大学を卒業した後、大阪の洋菓子店で修業を積んだ克勲さんが93年、故郷に戻りました。ケーキを中心に担当し、店が休みの週末になると自己研さんを兼ね、大阪や神戸へ食べ歩きに通いました。

 そんな中、出合ったのが、皮がしっかりとしたシュークリームでした。「ふわふわしたタイプのシュークリームしか知らず、そのおいしさに衝撃を受けました。『これを作ったら売れる』じゃなく、『このお菓子を自分で作ってみたい』が正直な気持ちでした」。パティシエの向上心に火が付きました。

 

 

 

 

作り立ての食感味わって

▲シューパリ。老若男女に人気で、遠方から来るお客さんの中には、「ご近所さんに頼まれて」と何十個も買い求める人もいるそう

 皮はじっくり1時間かけて焼き、クリームはカスタードクリームと生クリームをこだわりの配合で混ぜ合わせます。「目指しているのは『もう1個食べたい』と思ってもらえる味です」と克勲さん。アーモンドとバターの香りも食欲をそそります。

 研究、試作を重ねた自信作。月~金曜は500~600個、土曜は1000個以上を売り上げます。作り立ての食感を楽しんでもらうため、1回に焼くのは60個。土曜は20回ほどに分けて仕上げます。

 焼き上がる午前9時以降、客が途切れることのないほどの看板商品になったシューパリ。「実は、皮が硬めで、アーモンドの粒をふったシュークリームを『シューパリジェンヌ』と呼び、うちでも最初はこの名前で出していたんですよ」と教えてくれました。「それが『シューパリください』と注文される方が増え、名前を変えました。そういう意味でお客さんに育てていただいた商品なんです。これからも自分の納得いくものを作り続けたい、ただそれだけです」

▲姉妹品も充実。(左)抹茶クリームたっぷりの「抹茶パリ」と、チョコクリームを詰め、さらにシュー皮をチョコでコーティングした「チョコパリ」。(右)自家製プリン入りの「シュープリン」、真っ赤ないちごが目を引く「いちごシュー」

 

春栄堂

和歌山市和歌浦中1-5-13
電話 073-444-0571
※営業時間、定休日等はお店に直接ご確認ください。

(ニュース和歌山PLUS79号/2021年10月29日発行)