「ハーブで地域を盛り上げたい」と意気込むのは、農学の博士号を持つ異色の農家、米田基人さん(47)です。微生物農法でハーブを育て、香り成分を抽出した調香料を10日に発売。さらに8月6日㊏の観光農場オープンに向け、忙しい日々を過ごします。

博士で農家

──出身は?

 「福岡です。小学生の時にアフリカの食糧問題を知り、解決したいと農学部で遺伝子組み換え技術を研究しました。しかしそれでは通用しないと気づき、大学院では植物と共生する土壌微生物に転換しました。農業支援を目的に2012年、アフリカのルワンダへ。種を買うにも村中からお金を集めての一大事です。コストのかかる化学肥料より、微生物が役に立つと確信しました」

──それがなぜ、紀の川市で農家に?

 「現地でアドバイスするうち、実際の栽培を学ばなければと考え、帰国後、有機農業に理解のある紀の川市へ移住。植物と微生物の共生を調べるため、種類が多く、様々な使い方ができるハーブ農家になりました。態勢が整った19年から産直市場やインターネットで販売する中、課題に直面しました」

──どんな課題ですか?

 「日持ちせず、割高感があり、種類によって料理に入れるタイミングが違うため、知識がなければ使いにくいのです。どうすれば身近になるか考えた答えが、北勢田にオープンする観光農場と、市の六次産業化コンテスト出場を機に開発した液体ハーブこと調香料『×herb(クロスハーブ)』です」

香り求めて

─液体ハーブとは?

 「心を落ち着かせる香り成分を、蒸留装置で抽出しました。カモミールやバジル、ローレル、ディル、フェンネルなど。湯に加えるだけでハーブティーを作れ、ミントソーダやカクテルにも使えます。スプレー型なので、調理後にワンプッシュすれば香りづけになります。意外な組み合わせは、カフェオレにローズマリー、卯の花にマジョラム。香りだけでない変化が生まれたと評判です。個人や飲食店で色々試してもらいたいですね」

──観光農場では何を?

 「フレッシュハーブを収穫できます。これを蒸留するところを見てもらい、抽出したものは持ち帰って、アロマのようにどうぞ。ハーブを使ったお茶や料理も試食できます。来年以降は、キッチンハーブ用の苗販売や寄せ植え体験、洋風の薬膳を提供する予定です」

──今後の予定は?

 「目指すのはハーブで地域を盛り上げること。紀の川沿いの農家5人とグループ『紀州ハーブ』を立ち上げ、青洲の里を拠点にイベントを開き、育て方や使い方を発信します。8月から京都大学で薬用植物と微生物の研究も始めます。共生していると香りや薬効成分が増すとのデータがあります。これは植物が元気な証し。アフリカで健康な作物を栽培するため、研究を続けていきます」

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 液体ハーブは全20種類。4㍉リットル800円、10㍉リットル1500円。観光農場は土日のみ営業。詳細は「米もと農園」インスタグラム

(ニュース和歌山/2022年7月30日更新)