豊かな自然に囲まれた紀美野町で、芸術品のような美しいフルコースを味わい、至福のひと時を過ごせると評判のヴィーガンレストラン「リーブス・オブ・グラス・キミノ」。腕を振るうのは、野菜料理のパイオニアと言われる大平哲雄さん(49)です。「野菜がメーンのコース料理でも満足していただけるのは、様々な国の料理や技術を学んだからこそ」と胸を張ります。

ヴィーガンに趣向

──このハンバーグ、味に深みがあって、食べごたえ抜群ですね。

 「数種類の野菜に穀物を合わせて作ったヴィーガン料理です。ヴィーガンとは野菜や穀物が中心で、肉や魚、牛乳、卵などを食べない完全菜食のこと。といっても、ヴィーガン以外の人も楽しめるよう、私はフレンチとイタリアンをベースに趣向を凝らし、野菜だけなのに肉や魚を食べた後のような満足を感じてもらえる料理を提供します」

──他にどんな料理を?

 「8、9月に注文が多かったのは、タマシロダケのソテー。アワビのような食感を生かし、香ばしく焼き上げました。ほかにも、加茂ナスのオーブン焼き、万願寺トウガラシに具を詰めたファルシェなど、バリエーションは豊富です」

──どんな工夫を?

 「玉ねぎやニンニク、ショウガといった香味野菜、根菜と複数の野菜を組み合わせ、しっかり味をつけます。また、素材のうま味を最大限に引き出すため、加熱方法を工夫。淡白な味のサトイモは低温でじっくり火を通して生に近い食感を残し、逆にトマトやカブの甘みを出したい時はオーブンで水分をとことん抜きます。華やかな盛り付けも大切に、1皿ごとに情熱を向けています」

──食材のこだわりは?

 「約7割がオーガニック野菜。併設の菜園で育てているほか、地元の農園や全国の契約農家から、旬のものを取り寄せます。和歌山は果物も充実していますね」

未来感じ移住

──出身は?

 「東京です。20歳で海外へ。イタリアを中心に欧州、中東、インドなど20ヵ国以上のレストランで腕を磨きました。どの国でも文化として野菜料理を楽しむ人々がいることに驚き、『日本でおいしい野菜料理を提供したい』と2009年、東京で店をオープン。徐々に常連ができ、企業のレシピ開発や飲食店プロデュースへと仕事が広がりました。2年前、コロナ禍で新しい生き方を考えていた時、友人の誘いで紀美野町を訪れ、未来を感じ、家族と移住しました」

──感じた未来とは?

 「宿泊施設を備えたレストランで、土地のものを提供する『オーベルジュ』の構想を持っており、この土地ならできると確信しました。その一環で、10月に体験農園を始めます。地方へ出たい企業に対し、地方分散型社会のモデルケースになれば、地域貢献になります」

──開店から半年です。

 「『野菜ってこんなにおいしくなるんやね』と喜ばれる一方、最後までヴィーガンと気付かない方も。今後、世界的な食糧難が予想される中、自給率を高めるだけでなく、いかに野菜や穀物をおいしく食べるかが重要。『日本料理』『フランス料理』のように、『ヴィーガン料理』として野菜料理を楽しむ文化を各家庭へ浸透させたいですね」

 

【Leaves of grass KIMINO】

紀美野町三尾川898-1
☎073・495・3031
㊊㊋休み 完全予約制
11:00~15:00
18:00~21:30
※土日祝のランチは11:00~13:00と13:00~15:00の2部制

(ニュース和歌山/2022年9月24日更新)