《回答者》
◆整形外科
貴志川リハビリテーション病院
手外科専門医・足の外科認定医
整形外科専門医
谷口 泰德 副院長
ヒトの歯による咬み傷はヒト咬傷と呼ばれます。手のヒト咬傷は、ヒトとの喧嘩で咬まれたり、握りコブシを振り回して相手の歯にあたって手に傷ができます。動物とは異なりヒトの歯は比較的鈍いため、手のヒト咬傷は通常、打撲傷や浅い裂傷になります。しかしコブシの裂傷が時には、指を動かす腱や関節にまで達して腱が切れたり、折れたヒトの歯のカケラが関節内から見つかることもあります。コブシの裂傷に感染が起きると、激しい痛みを伴い、化膿し赤くなって腫れます。化膿性関節炎や骨髄炎になると手に運動障害などの後遺症が残ります。
さらにヒト咬傷で耳や鼻、唇などのような重要な部位が咬まれると、損傷が深刻になることもあります。患者さんはケガの理由を隠す場合もあり、そのため適切な治療の開始が遅れることがあります。病気を持つ咬んだヒトから肝炎が感染することがあります。ヒト咬傷は、感染の危険が高いので感染予防のため、直ちに適切な処置が必要です。まず、清潔な布やガーゼで圧迫し止血を行います。流水で傷口を洗浄して、清潔な布で包帯をします。手の傷が深かったり、咬まれた場所が顔などの重要な部位の時は、直ちに救急医療機関を受診してください。
(ニュース和歌山/2025年6月29日更新)