海の幸、山の幸ともに豊かな和歌山の食を取り巻く活動が元気です。海南市と紀の川市では食を通じたまちおこしが動き始めました。また、昨年末には「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定されました。ますます注目される和歌山特産の梅を使い、昨年、全国1位に輝いた2商品の舞台裏を紹介します。

 

紀の川市 フルーツでまちに彩り

16010323_fruit 桃にいちじく、柿、はっさくが全国でトップクラスの生産高を誇る紀の川市では、市民有志でつくる「フルーツ・ツーリズム研究会」が、果物によるまちおこしに奮闘している。果物を生かしたイベントや土産品を開発し、まちの魅力をアップさせ、観光客を呼び込むのがねらいだ。

 市の呼びかけで集まった市民が2014年8月に発足させた。中心メンバーは農家や主婦、飲食店店主、デザイナーら約60人で、それぞれの特技に果物を掛け合わせ、アイデアを練る。これまではっさく鍋や桃のクリームパスタなど新レシピを考案し、イチゴを模したアクセサリー作りの教室、旬のフルーツを使った和菓子を味わう茶会を開催。川柳コンテストでは全国から2013句を集め、さらに地元の小学生らと描いた366枚の絵でフルーツカレンダーを完成させるなど活動は広がる。

 昨年11月には、個々の取り組みをまとめたプレ・フルーツ博を市内各所で1ヵ月間開いた。小物作りのワークショップに果物の寿司やいちじくカレーの販売、大茶会と盛りだくさんで、県内外から約2000人が訪れた。メンバーの井関結加さんは「メーン会場の市役所は果物一色に染まった。全部思いがこもった手作りで、大人の真剣な文化祭のようでした」。

 2017年の春には、桃の花の季節に合わせてフルーツ博を開く。島津章会長は「イベントを充実させ、収穫体験や果物のグッズ、料理目当てにもっとたくさんの人が訪れる地域にしたい」と描く。
 果物の産地からフルーツの文化が育まれるまちへ。紀の川市に新たな彩りが生まれている。

 

海南市 鱧と菓子 2大名物発信

16010323_hamo 「海南で鱧(ハモ)と菓子?」。地元でもあまり浸透していない眠れる2大資源で海南を盛り上げようと、地元飲食店や食品事業者らでつくる「鱧の街・菓子の街海南プロジェクト」が立ち上がった。「海南は日用品メーカーが多く、出張で多くの人が訪れる。『海南と言えばこれ』という名物がほしかった」と鱧グループに参加するレストラン、シャンボールの前田洋三さんは語る。

 下津町の戸坂漁港で水揚げされる鱧は、日本料理店で1、2万円するコース料理に使われる高級魚。これをハンバーガーやどんぶりなど手軽なグルメとして地元の店でメニュー化するため、会員が試作を繰り返し、試食会を開く。通年での提供を目指すほか、年1度の鱧祭りも企画中だ。

 一方、下津の橘本神社は全国で2つしかない「お菓子の神様」をまつり、全国150の製菓会社らが奉納に訪れる。その由来を生かした菓子での活性化プロジェクトも同時に進む。

 現在は30、40代のカフェや菓子店オーナーが結集し、下津特産のビワを使ったスイーツの開発や、橘本神社の菓子祭・全国銘菓奉献祭に合わせた菓子博を計画する。菓子グループの野田智也さんは「子どもはお菓子が大好きなのに、橘本神社のいわれをほとんど知らない。教育面でも〝お菓子の街〟を教えていきたい」と意気込む。

 来春の菓子博に向け、今年は秋にわんぱく公園でプレイベントを開催する。全国から人を呼び寄せる起爆剤になるか、子どもたちのハートをつかみにいく。
写真=鱧グループが開いた試食会

 

カワ まるごと!?紀州梅バーガー ラーメンに続け ご当地グルメ

16010323_umebur 県内と大阪で17店舗を展開する創業34年のカワ(本社・広川町広)。鳥取県で開かれる「とっとりバーガーフェスタ」で2014、15年と日本一に2年連続で輝いた「まるごと!?紀州梅バーガー」の勢いが止まらない。本社企画室の今西廣典さんは「『梅はご飯に合うもの』との常識を覆す商品になりました」と笑顔を見せる。

 手軽に食べられるハンバーガーで県産梅を発信しようと、12年に県と食品事業者らが紀州梅バーガー開発研究会を発足させた。そこから生まれた商品のひとつが、カワの梅バーガーだ。

 種を抜いた南高梅を丸ごと1個入れ、ジューシーな紀州うめどりのカツを食べごたえのある八穀バンズで挟み、ボリュームはたっぷり。梅をピクルスにしたタルタルソースと梅肉の黒ソースも使い、まさに梅づくしの一品に仕上がった。

 開発当初は梅の酸味を目立たせないよう、バンズに梅を練り込んだり、ソースの中に入れたりと試行錯誤したが、何かパンチが足りない。発想を切り換え、「梅らしさを隠さず、前面に出そう」と、塩分を通常の3分の1程度に抑えた梅を丸ごと入れたのが功を奏した。

 422円と同店の中では高額ながら、売り上げ上位に躍り出て、1年間で10万個以上を売り上げるヒット商品に成長。受賞を機に自治体からの問い合わせが増え、昨秋からは古座川町と協力し、「清流鹿のジビエバーガー」を誕生させた。和歌山ラーメンに次ぐ新たなご当地B級グルメの登場に、県内外から熱視線が集まる。

 

中野BC なでしこのお酒「てまり」 緑茶梅酒 定番品おしゃれに変身

16010323_nakano 昨秋、全国の酒蔵から164銘柄が出品された全国梅酒品評会で、8部門のうち2部門で金賞、銀賞を唯一受賞した中野BC(海南市藤白)。ブレンド梅酒部門で金賞に輝いた「なでしこのお酒『てまり』緑茶梅酒」は、発売24年のロングセラー商品の外観を女性向けに変身させ、昨春デビューした。

 宇治の茶葉を直接梅酒に漬け込み、風味を損なわないよう火を使わずにゆっくりと茶の成分を抽出する。緑茶の渋みと梅のさわやかな酸味がバランスよく、食事の邪魔にならないと評判。梅酒杜氏(とうじ)の山本佳昭製造部長は「30種類以上のカクテル梅酒を製造する中でも草分けと言える商品。ベースは酸味料や着色料を使わない本格梅酒でアルコールも12度と高すぎず、さっぱり飲みやすいと好評です」。

 受賞には、部署を超えた女性8人によるなでしこチームが大きく貢献した。和風モダンなイラストのラベル、ワインのようなボトルの形状、180㍉リットルの同社初の飲みきりサイズを作るなど、女性ならではの目線が高評価につながった。「ラベルをはる位置やフタの模様など細かい部分にこだわり抜きました。自分たちが欲しくなる、女子会で飲みたいおしゃれなものができました」とセールス&マーケティング部の山中真梨奈さんは胸を張る。

 同社では昨年から常時、大粒の南高梅を使った梅酒やシロップのつけ込み体験教室を開いている。山本部長は「私たちは梅の伝道師。和歌山で梅にふれてもらう入口になりたいと思っています」。多様な切り口で梅の楽しみ方を広めていく。
写真=部署を超えて集結したなでしこチーム

☆カワ:商品券、中野BC:なでしこのお酒「てまり」のプレゼントあり
※詳細はニュース和歌山2016年1月3日号紙面をご覧下さい。

(ニュース和歌山2016年1月3日号掲載)