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 家族団らんの温かみを地域住民と共に──。満足に食事がとれない子どもや、いつも1人で食事する大人が集まり、共に食卓を囲むことで互いに思いやる気持ちを育もうと、和歌山市中之島の柔道会館で「中之島こども食堂」が3月23日に初めて開かれた。企画した同市の新家貢さんは「経済的な課題の有無にかかわらず、居場所がないと感じている人に来てほしい。様々な人とふれ合う中で『第二のふるさと』を見つけられる場にしていきたい」と描いている。

 2014年、新家さんが大阪のレストランに入った時、土曜の夜に1人で食事する若い世代が多いことに驚いた。「『孤食』という言葉が頭に浮かびました」。速読や能力開発の講義、子育て相談を行うかたわら、県青少年育成協会の講座で朝飯会や芋煮会など「だれかと食事を楽しむ」ことを提案してきた。「共に食べる人がいれば、味の感想を語り合ったり、食べるペースを気遣ったりと相手を思う心が育まれる。仲間同士の関係も深まり、ごはんがおいしくなります」と笑顔を見せる。

 子どもの貧困問題から食事支援を行う「子ども食堂」が全国で広がり始め、和歌山で実践しようと一念発起。自らが事務局長を務める県柔道連盟の施設で定期的に食堂を開く決意をした。

 特徴は、食事に困っている子どもや単身世帯だけでなく、一般家庭なども広く受け入れる点だ。様々な背景を持つ人が集まることで、現代社会が抱える孤食の現状を知ってもらい、協力者を増やしていきたいと考える。

 初日は、関係者を中心に心当たりのある子どもに呼びかけて開催。準備は、自宅で子どもたちに料理を教えている同市の柴友加里さんが協力し、子どもたちと一緒にカレー、コールスロー、ラッシー約40人分を手作りした。「子どもたちはこれだけたくさんの量を作る機会はなく、効率良く正確に作業を進める方法を考える経験ができました」と柴さん。

 日が沈むと集まり始め、カレーに舌鼓を打った。家族で訪れた同市の髙井洋平さん(33)は「家族以外の人と一緒に食べる機会は少ないですが、みんなでしゃべりながら食べるのも良いですね」。娘の柚奈さん(6)は「カレーが好きでおいしかった。一緒に食べた子と遊びたい」と笑顔。調理も手伝った越田さくらさん(10)は「タマネギを切るときに目がしみたけど、頑張って完成させました。みんな『おいしい』と言ってくれてうれしい」と喜んでいた。

 子どもは無料。大人は300円で、4月から第2・4水曜に開く。新家さんは「食材の調達や調理と、それぞれのかかわり方にやりがいや楽しみを持たせていきたい。初対面で少し緊張気味だったので、打ち解けられるようにレクリエーションなども盛り込んでいきます」と先を見すえる。

 食材の提供や運営協力者を募っている。新家さん(073・432・7775)。

写真=共に食卓を囲む(中央立っているのが新家さん)

(ニュース和歌山2016年4月2日号掲載)