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 淡いピンク色をした里山の花、ササユリを紀の川市高野の児玉道仁さんが所有する山で20年前から育て、保存に取り組んでいる。昨年、球根150個を追加し、1000本を達成。うち4、500本が今年開花予定で、見ごろを迎える5月27日(金)〜6月4日(土)に公開する。「朝夕になると気品ある香りを漂わせる、しとやかで清そな花です。観賞しながら、自然の中でゆったりとしたひとときを過ごして」と笑顔を見せる。

 鹿児島に生まれ、熊本の天草で育った児玉さんは、大阪で高校教諭をしていた1994年、田舎暮らしをするため和歌山に移住した。桃畑やみかん山に囲まれた里山に茶室のある日本家屋を建て、野菜を育てたり、鶏を飼育したりしながら半自給自足の生活をする。

 ササユリとの出合いは30年前。大阪の山で「森に差し込む光に照らされ、ぽっと美しく輝いていた」ササユリにひとめぼれした。偶然にも移住を決めた現在の自宅敷地内に5、6本自生しており、20年前から毎日害虫を捕り、支柱を立てて自然に繁殖させ、球根を買い、増やしてきた。

 種を植え、開花するまで数年かかり、土や日照条件が悪いと花を咲かせないことがあるデリケートな植物。県立自然博物館の内藤麻子学芸員は「里山の環境が変わり、昔に比べ数は少なくなった。乱獲やイノシシとシカの被害が増え、人が愛情を持って育てないと群生は難しい」と話す。

 児玉さんは退職した4年前に「人に喜んでもらえることをしよう」と公開を始めた。毎年、見ごろに来る約100人の訪問客をもてなす。アジサイ150株も育てており、児玉さんは「6月に咲き始めるアジサイとの共演も見事。近くの川で蛍も乱舞します」と語る。

 午前10時〜午後4時。希望者は前日までに児玉さん(090・2389・8744)。

写真=開花したササユリの写真を持つ児玉さん

(ニュース和歌山2016年5月14日号掲載)