プロ目指し笑顔と元気届ける

161217_taiko 伝統芸能、和太鼓のプロを目指す若手演奏家集団「IKORA」が元気だ。紀北地方に住む10~30代のチームで、プロ太鼓ユニットでの活動経験がある岩出市の峯本雄貴さん(30)が引っ張る。勇壮で激しいバチの連打から、「いこら!」と掛け声をあげ、会場全体を躍動感で満たすステージが好評。地域のイベントに限らず、ライブハウスなどでの公演も増やしており、「『和太鼓と言えばIKORA』と言われるよう、和歌山から全国へ名前をとどろかせたい」と気合いをみなぎらせる。

 峯本さんは紀北農芸高校時代、和太鼓部に所属。太鼓を打つ強さや連打の組み立て方で曲になる和太鼓の奥深さにふれ、自らオリジナル曲を作るほどのめり込んだ。

 卒業後は地元和太鼓グループに所属したが、本気でプロを志すようになり、かつらぎ町のプロ奏者、井寄忠明さん(50)に師事。部活ではふれることのなかった、キレのある打ち方や筋肉の使い方をたたき込まれ、「太鼓と会話するように打つと自分の気持ちと音が連動します。太鼓と同化する感覚が身につきました」。

 2009年には関西圏のプロ奏者が集まるOTO座メンバーとしてアジア5ヵ国の舞台に立ち、11年は東京の国際コンテストで県内初の3位に。着実に力を付ける一方で、同校OBとコンサートを開くなど地元での活動にも情熱を注いだ。

 IKORAは3年前、和太鼓の力で地元を盛り上げようと峯本さんを中心に結成。和歌山に根ざしたプロ集団を目指す16~30歳の10人が井寄さんの道場で週2回稽古に励む。練習は太鼓の技術にとどまらず、長時間の演奏に耐えうる身体づくりのため、食事やサプリメント指導、筋力、体幹トレーニングまでを含む本格的な内容。メンバーで同校和太鼓部の中村亮斗(あいと)さん(18)は「部活では学べない、より専門的な技術を身につけようと入りました。レベルの高い先輩についていくのが楽しい」と笑顔を見せる。

 ライブハウスでの自主公演や地域のイベントに積極的に出演し、初年度数回だった年間公演数は今年、40回以上。テンポを上げて激しく演奏し、太鼓をスイングさせるパフォーマンスを織り交ぜた、活気と若さあふれる舞台は定評がある。公演のラストを飾るオリジナル曲『松風』は疾走感あるリズムと、曲中に観客と一緒に上げる「いこら!」との声で会場を盛り上げる。峯本さんは「地元の人は一緒に叫んでくれて、一体感が味わえます。『いこら』を合い言葉に県外でもアピールしたい」と笑う。

 公演後、握手を求められ、「元気をもらえた」と感謝されることが多い。小学生時代に不登校を経験したメンバーの吉本優大さん(16)は「お客さんの笑顔が自分の力になります。世代、職業問わず色んな人との出会いがある和太鼓をこれからも続けたい」。峯本さんは「プロの卵ながら、聞いた人の人生を後押しできる演奏を届けます。和歌山の聞き手に育ててもらい、世界で活躍する奏者を目指します」と描く。

 活動を見守る井寄さんは「常に力一杯の演奏をする若者の姿は見ていて気持ち良い。独自性や和歌山らしさを磨き、祭りの芸能の枠を超えた集団に成長してほしい」とエールを贈っている。

(2016年12月17日号掲載)