〝ヘンてこお茶目なちんどん屋さん〟ことポズック楽団が絶好調だ。社会福祉法人一麦会の共同作業所ポズック(紀の川市粉河)に通う、障害のあるメンバーによるプロのちんどん屋さん。自分たちの楽しみに始めたが、今は毎週末、和歌山県内や近畿一円のイベントにひっぱりだこだ。三線とちんどん太鼓に乗せた出し物は見る者を笑顔にし、行く先々で大きな拍手を浴びている。

笑顔咲かせる ポズック楽団

 「さあさあにぎやかな鳴り物を持ってやってきました〜」。カラフルな和服を身に、顔面白塗りで傘や楽器を手に登場する面々。演奏と踊りが始まると、一気に場をお祭りムードに染め上げる。

 ステージは、ダウン症、自閉症、アスペルガーと障害がある7人の個性が命。作業所スタッフでデザイナーの奥野亮平さんの三線、妻の麻美さんのちんどん太鼓のリズムに合わせ、ポーズを決めたり、ずっこけたり。息のあった演出に加え、ハプニングも見せ場で、亮平さんは「ステージは楽しめる空気をつくり、自由にアドリブが出るよう心がけています。何が飛び出すか、ぼくらも楽しみです」と笑う。

 ポズックは、障害のある人が絵画、刺しゅうなど創作活動をし、販売する共同作業所。そこにメンバーのストレス発散のため亮平さんが3年前にちんどんを持ち込んだ。

 亮平さんは、阪神淡路大震災後にちんどんスタイルで避難所を回り、民謡を演奏し被災者を応援したロックバンド、ソウル・フラワー・ユニオンを目にし、「だれでも入れる感じがいい」とちんどんにあこがれていた。

 廃材の楽器や太鼓づくりのワークショップから始め、地域から声がかかるようになった。最初は練り歩きが主だったが、演目を決めて演じるうち、メンバーが生き生きとしてくるのを感じた。

 昨年からは作業所の事業とし、プロのちんどん楽団として活動を始めた。評判は広がり、今年は夏場を除き、週末のスケジュールはぎっしり。商店街の祭りが多く、大阪の商店街では「懐かしい」と泣いてくれたおばあさんがいた。麻美さんは「弱音を吐かないでやりきるようになった。認められたことで、みんなとても落ち着きました」と目を細める。

 メンバーは20〜30代。宮市匠さんはポズック楽団の魅力を「(自らの担当する)旗! ヒロくん!」と人気のパフォーマーのヒロくんこと中村大樹さんを讃える。高橋茉奈美さんは「楽しい。ハッピー」。坂上加那子さんは「みんなの前に立ち、笑顔が見えてうれしい」とほほ笑む。

 10月21、22日に開かれた奈良障害者芸術祭ではうれしいことがあった。音楽劇に出演したポズックを見て、ダウン症の子を持つ母親が「楽しかった。未来は明るいと思いました」と声をかけてくれた。メンバーの保護者からも「人から指をさされ笑われることもあったけど、ステージでは人を笑わせている。宝だと思った」との感想が届いた。

 一麦会の田中秀樹理事長は「内なるものを表現することをきっかけにみんな明るくなった。いつか一座としてマイクロバスで旅する日が来ればと話しています」と喜ぶ。

 亮平さん、麻美さんは「一つひとつの機会を大切に『未来は明るい』と一人でも多くの人に思ってもらえれば。障害のある人はみんないいものを持っているのに選択肢が少ない。ありのままで仕事できる場所が増えたらいいですね」と願う。

 和歌山市では11月25日(土)午後1時から、みその商店街のハッピーアートデイでパフォーマンスを披露する。ポズック(0736・79・3611)。

写真=和歌山のみならず近畿一円を飛び回るポズック楽団

(ニュース和歌山/2017年11月4日更新)