バーテンダー 平野祐さん

 木製のクラシカルな扉を開けると、L字型のカウンター越しに柔らかな笑顔が迎えてくれる。開店24年、和歌山市楠右衛門小路の「バー・テンダー」マスター、平野祐(たすく)さん(52、写真)だ。昨年11月、地域の酒文化への貢献が認められ、和歌山県内の優れた技能を持つ人に贈られる県技能賞にバーテンダーとして初めて選ばれた。「水商売とやゆされがちなこの職業の地位向上は願いでした」と語る。

 自動車部品を扱う会社に勤めていた22歳の時、大阪市のバーで、果実を鮮やかにカットし、新鮮な果汁を加えて作るカクテルに出合い、衝撃を受けた。果物の豊富な和歌山で広めようと決意し、和歌山市内のバーで働きながら大阪に通って修行を積み、1994年に独立した。

 技術を磨くため、数々の大会に参加した。長野オリンピックに合わせ開かれた国内初のコンクールで優勝。頂点を目指す選手たちをイメージし、ウォッカをベースにミントと桃のリキュールを合わせたカクテル「スプリーム」を各国選手に振る舞った。オリジナルカクテルは数千種類にのぼり、県産品を地域の酒文化に生かそうと2011年にみかんを使ったカクテル大会を有田市に提案し、開催を実現した。

 平野さんのもとに通い、世界に羽ばたく後進が生まれている。田辺市出身の池上祐子さんは昨年、バーテンダーのアジア大会で準優勝、2015年の世界大会で優勝した奈良の金子道人さんも愛弟子だ。それぞれに熱を込めて伝えたのは、客の好みや体調を読み取り、一杯ごとに調合や飲み方を変える心配り。その姿勢は、海外でも評価され、ウイスキーの本場スコットランドの蒸留所の親善大使も務める。平野さんは「星の数ほどカクテルはある。バーテンダーは一生涯技を磨き続けられる仕事。最高のおもてなしを追求し、後進に伝えたい」。今夜も一杯一杯に魂を注ぐ。

(ニュース和歌山/2018年1月20日更新)