豊富な知識や技能を持つ高齢者の社会参加を促そうと、和歌山県が昨年スタートさせた「わかやま元気シニア生きがいバンク」。地域で活動したいシニアと、その力を求める団体や企業などを結ぶ取り組みだ。募集開始から約7ヵ月で登録した高齢者は753人、47団体。事務局を務める県社会福祉協議会の植山均さん(64)は「登録者からは『人に喜んでもらえると、逆に元気をいただける』とよく聞く。高齢者の活躍の場を広げたい」と意気込んでいる。

和歌山県の生きがいバンク〜協力求める団体と橋渡し

 和歌山県の全人口に占める65歳以上の割合は昨年1月時点で30・9%と全国で7位。今後も高齢化は進み、国立社会保障・人口問題研究所の推計を見ると2040年には39・9%になると予想されている。

 そんな中、県は今年度から10年間の展望をまとめた県長期総合計画で、〝80歳現役社会の実現〟を掲げる。その施策として立ち上げたのが元気シニア生きがいバンクだ。

 ボランティア活動や仕事を希望するおおむね60歳以上の高齢者と、高齢者が持つ知識と技能を必要とする団体、企業など(個人は不可)、双方に登録してもらい、つなぐ。それぞれの希望はHPに掲載している。

 同様の仕組みは和歌山以外にもあるが、県長寿社会課は「他府県は資格や特技を持っている人に限定しているところが多い。和歌山は知識や経験がなくても意欲さえあれば、だれでも登録できるのが特徴」と説明する。

 バンクを通じて実現した活動はこれまで23件。今のところ、全てが高齢者施設を訪れ、歌や手品を披露するものだ。
 福祉施設訪問や海南市に伝わるつつてん踊りの継承などに取り組むあやめ会は、バンクを介して依頼のあった3ヵ所を訪れ、民謡や舞踊、クイズ、ゲームと多彩な内容で交流する。笠松俊博事務局長(72)は「うちの会員は約30人で、平均年齢は70歳ぐらい。私たちも同じ高齢者です。一人一芸で頑張っており、練習してきた成果を披露できる場をいただけることが生きがいになっています」。

 5年前に高齢者が集まるサロンを立ち上げた同市藤白の南嘉代子さん(80)も登録者の一人。昨年10月、依頼を受けた別の高齢者サロンで手品を披露し、輪ゴムや割りばしを使った簡単なマジックを一緒にして交流した。「初めて会った方々と絆を結べました。仲間づくりが生きがいづくりとなり、健康寿命を延ばすことにつながると思います」と笑顔を見せる。

 調整中だが、小学校と中学校計4校からバンクへ依頼が届いている。名草小学校は花や野菜の栽培方法、昔の遊びや暮らし、ミシンの指導のほか、図書室運営を手伝ってくれる人を希望。その他は校内での木のせん定や草刈り、花の栽培などだ。

 こうした情報を見て、「『友人を誘って、手伝いに行こうかしら』と思ってもらえるとうれしいですね」と県長寿社会課。「活動して喜んでもらうことが生きがいとなり、ひいては高齢者の健康増進、介護予防につながる。相乗効果が生まれるのでは」と期待している。

 詳細は「わかやま元気シニア生きがいバンク」HP、または和歌山県社協(073・435・5214)。

写真=訪問先で手品を披露する南さん(県社協提供)

(ニュース和歌山/2018年2月3日更新)